「なんの曲聴いてるんスかっ?」
「うわっ来た」
「なにその対応!」


黄色い頭に眩しい笑顔。
つくづくこいつ、黄瀬涼太という無駄にでかくて顔の整った人間版ゴールデンレトリバーは、太陽みたいなやつだと思う。
多くの女子が中身を知らずとも(けっこうゲスいと仲良くなってから知った)外見だけでお目目をハートにするくらいにイケメンなのに、なんであたしなんかにかまうのか、きっかけは忘れてしまったけど時々疑問に思う。
もっと可愛らしくて女子力満点な子なんて振り返ればたくさん、たくさん居るのに。

なんて思いながらもあたしがこいつを拒めないのは、あたしの中にある儚い想いのせいである。
そりゃあ、素直に嬉しかったりするよ、だってこんな仲良くできてる女子なんてほかに見たことないもん。
少なくとも、当たり障りのない"他人向け"の笑みを向けられる存在ではないことは確かだ。


「片方貸して、イヤホン」
「えー、絶対黄瀬は聴かなさそうなジャンルだよ」
「オレどんなジャンルでも大抵イケるっス!」
「うそつけ」
「まあ、別に久遠がどんな曲聴いてんのか気になってただけだし、いーじゃないスか」


ん、と無愛想な顔を作りながらイヤホンを渡す。
机の下でアイポッドを操作して、どの曲がいいかなぁなんてバレないように指を行ったりきたり。
だってやっぱり、どうせ聴かせるならあたしの好きな曲とか、共有してみたい、し・・・


「・・・、」
「あれ?流れてないじゃん!」
「・・・待って、今から流すから」


頬杖をついた手で口元を隠しながら、目に留まった曲をクリックする。
近くて遠い、届きそうで届かない、重ねるにしては少しロマンチックすぎるけど、そんな恋の歌。
切ないような、でも想い人と居られる幸せを噛み締めている、そんな歌。

チラリと黄瀬を盗み見れば、切れ目の瞳と目が合った。
逸らそうにも不自然かなと思って、笑っておく。
すると、何故か大きな手があたしの頬を弱い力でつねった。


「な、なに・・・」
「んーん、なんでもないっス」
「はー?」
「なんか、久遠かわいいなって!」
「はぁ!?」
「こんな曲も聴くんスね!」
「・・・あ、ああ、あー、うん」


そういうことか、びっくりした。
可愛いって言われたと思って勘違いしたあたしを殴りたい。馬鹿か。
頬に集まった熱に気づかれないように、下を向いて頬杖をつきなおす。

大きな手が、こんどは頭に乗った。


「・・・ちょっと、なにマジで。子どもじゃないんだから」
「オレ、久遠のこと好き」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は・・・?」


にいまりと笑って、黄瀬は耳にしていたイヤホンを外した。
その頬は、ほんのりと朱色に染まっている。


「もちろん、そっちの意味で!」


聴こえる音の向こうには君
自惚れても、いいのかな
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