夏の暑さも大分抜けた九月下旬のこと。
年に一度、この時期には毎年遊園地に出かけるらしい。前日から遠足前の子どものように眠れて居なかった久遠だが、サソリの手を引き楽しそうにうふうふしていた。
普通ならば五、六人チームを編成して院の先生が一人つくようだが、この元暁メンバー+久遠には必要ないだろうということで、一番頼りになりそうな角都に一言「ルールを守って遊んでね」と言付け放置だった。帰りの集合時間は午後四時である。

遊園地の地図を手に、久遠は暁メンバーの輪の中に駆け寄った。
ずっと手を引かれていたサソリは早々に振り回され、若干苛立っている。


「長門!とってきた!」
「ああ、ありがとう久遠。よし、じゃあ順序をきめるぞ」
「ジェットコースターはいちばん最後にしろ。こいつにふり回されたせいで今から行ったらオレは死ぬ」
「旦那、ごしゅうしょうさま・・・うん」
「いちど昼休憩をはさみましょう。ここのレストランでどうです?」
「カレーあんじゃねーかカレー!舌がひりひりするくれーのがいいなぁ!」
「カレーは高い。もっとあんかなのにしろ飛段」
「だんごはないのか」
「ゆうえんちまで来てだんごなんていうのやめてくれる」


ばっさりと切り捨てた小南に、イタチは少ししょげたように俯いた。
そんなイタチに久遠が萌えを発動させ、次のターゲットにされたのは言うまでもない。


***


コーヒーカップ、メリーゴーランド、バイキング、
サソリは嫌がっていたが甘えた倒した久遠に無理矢理ジェットコースターに乗せられ、遊園地の醍醐味はほぼ全部回った。
怖いもの知らずの久遠に振り回されっぱなしのメンバーであるが、満更でもなくむしろ楽しんでいるのは全員共通だろう。
ただ鬼鮫はコーヒーカップで酔っていた。

空いたベンチに座り、アイスクリームを買ってくると売店に歩いていった年上組(鬼鮫、角都、オビト、小南、長門)の前世よりも小さな背中を見つめながら、久遠はふと思ったことを口にした。


「わー・・・しあわせだなぁ〜」


無意識なのだろう、言ってからはっと口元を手で覆い恥ずかしそうに目をうろつかせる彼女の呟きは、当然ながらここに居る全員の耳に拾われていた。
どう反応していいのかわからないデイダラと違い素直に喜んだ飛段が、「げはは!そうだなぁ!」と久遠の髪の毛をむちゃくちゃにする。
イタチが微笑んで、ぐちゃぐちゃになった髪の毛を撫でる。
隣に座っていたサソリも呆れたふうにその一連の流れを見てから、イタチに直してもらった頭を一度軽く叩いた。

ミックスアイスを両手に抱え、一番に戻ってきた長門が当然のようにそれを久遠に手渡した。


「ありがとう!アイスが落ちないかかくにんしながらこっちまで走ってくる長門はすんごい天使だった!!すき!!!」
「あ、こぼれるから早くたべろ」
「・・・長門のやつスルースキルみがいてんな、うん・・・」


冷たいアイスを口の中で溶かしながら、久遠はスルーされたことも気に留めずに大きな乗り物を見上げた。


「さいご、あれ乗ろうよ!」


***


大観覧車は、ここらへんでも有名らしい。
小さくなっていく景色に、キラキラした瞳で外を眺める久遠とデイダラの歳相応な表情。
そんな二人の表情を眺めながら、長門は小南と目を合わせて微笑んだ。


「それにしても、なんかふだんではない組み合わせになったね!」
「まぁ・・・たしかにそうだな、うん」
「しんせんでおもしろいな」
「そうね」


頂上に来た。
たっかーい!と大げさに喜んで見せた久遠は、すぐ後ろのボックスに入っているイタチ、サソリ、鬼鮫、オビトに手を振った。
ちなみに飛段と角都はそのまた後ろのボックスである。
じゃんけんで勝った順にボックスに乗り込んだのだが、絶望的な顔をしていた彼らを思い出すだけで少し笑える。


「帰ったらゼツにおみやげばなししてあげないとね〜」


きっとうらやましげにまってるだろうから、と微笑んだ久遠。

変態でつかみどころのない奴ではあるが、根は優しいと、ここにいる誰もが知っている。
沈み始めた夕日に、今日という日が終わってしまうことを寂しく思いながら、観覧車を降りた。

さあ、早く帰ろう。

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