とうとう学園祭の日がやって来た。
確か久遠とサソリのクラスは喫茶店、イタチのクラスはたこ焼き店をやると言っていたな。
まあ、まだ一年生でクラスに慣れてきたこの時期に内容の濃い模擬店なんてできないだろう。毎年一年生はそんな感じなのだ。


「長門くん、これお願いしてもいい?」


クラスの女子に声をかけられて、看板を高い位置に貼り付ける。
その際香水かなにかつけているのか、独特な匂いがして思わず小さく咳き込んだ。
香水は嫌いじゃないが、少し苦手だ。院で使う石鹸の香りしかしない久遠を思い出して無意識に微笑んでいたのだろう、「何笑ってるの?」と嬉しそうに話しかけてきた女子になんでもないと返して、飾り付けの仕上げに入った。
オレ達のクラスは、お化け屋敷だ。片目が隠れているのを理由に吸血鬼のコスプレをすることになったオレは、何故かお化け役ではなく看板を持って校内を回って宣伝するらしい。流されるままに、まぁ回ってればいつか久遠達にも会えるかと思い二つ返事で頷いたのだ。


《それではみなさん!待ちに待った学園祭の始まりですよ〜!ご、よん、さん、に、いち・・・!》


教室中のあちこちでクラッカーの鳴る音がする。
「長門くん、行こ!」同じようにコスプレをした女子に引っ張られ、オレ達も宣伝係としての役が始まった。


***


予想通り、花火を打ち上げるために再度オイラのところには依頼が舞い込んできた。
「デイちゃんもまだ若いんやけん、打ち上げの前に学園祭の雰囲気楽しんどいでェ」とババアに半ば無理矢理背中を押され、一般客として紛れ込んだ。
ったく、なにが悲しくて一人でこんなとこに来なきゃなんねんだよ、・・・うん。
だが、たこ焼きや焼きそば、様々な食べ物の匂いが立ち込めて、腹が減ってきたのは否めない。


「適当になんか買うか・・・」


立ち食いできるもんがいいな。
一人で喫茶店?なのかアソコは・・・まぁなんにしろ一人で入るのは気が引ける。喫茶店なんてこの世でいうリア充の穴場スポットだろ?うん。
綺麗げに飾られた喫茶店の前を通り過ぎ、たこ焼き店に足を進めようとした時、


「・・・もしかして、デイダラか?」


あの頃より幾分か低いが、聞き覚えのある声に肩を揺らす。
恐る恐る振り返れば、何故か吸血鬼のような格好をした長門が、見知らぬ女に腕を絡まされながら"弐ノ伍・お化け屋敷"とおどろおどろしい文字で書かれた看板を手にオイラを凝視していた。


「っ長門!?ハァ!?お前ここの学園に通ってたのかよ!?」
「待て落ち着け、落ち着けデイダラ何故ここに居る」
「お前も落ち着けよ、うん!」
「え?ああ・・・あ!」
「、なんだよ」
「落ち着いて聞けよデイダラ、この学園には、・・・」
「デイダラちゃん!?!?」


・・・・・この声。


「・・・・・・・・・久遠・・・?」


ずっと、会いたかったぜ、うん。

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