私は人に従うというのがとても嫌いである。
何故か?そんな具体的理由を聞かれたって困る。嫌いなものは嫌いだ。
私はなにものにも囚われずに自由に生きたいし、ましてや人に頭をたれるなんて死んでもごめんだ。わがままで傲慢だと思われてもいい。
そりゃあ、学校とか部活とか、集団の場ではそれなりに従ってもいるし、うまく立ち回っていると思う。
私がこんな性格になったのは、私のせいではなく、すべて赤司征十郎という無駄に顔の整った見かけだけはいい中身は悪魔の男のせいなのだ。


「久遠、喉が渇いた。ドリンクだ」
「・・・・・・・・・・・」
「久遠」
「いぎっ!?いだ!いだだだだ!?」


言うことを聞かなかったら力尽く。
私の頭を鷲づかみ、左右に揺らした悪魔もとい征十郎は、その無駄に整いすぎている顔を近づけて小さくささやいた。


「ど、り、ん、く」
「わかったから離せ馬鹿ぁ!!」


人に従うことは嫌いだ。
ましてや小さい頃からなにかと私を自分の足とでも思っているかのようにこき使う征十郎の命令なんて、死んでも聞きたくない、のに。

ううう、と目頭に浮かぶ涙をぬぐわないまま、さつきちゃんの近くにあるドリンクをひったくって征十郎に投げつけた。屈辱だ。外道め。さっさと死ねばいいのに。


「投げつけるとはいい度胸だな?」


そして私はまた失敗してしまったらしい。
つかつかと早足で私を追いかける悪魔もとい征十郎、いや帝王は、今度は私の頬をつかんで横に引っ張った。


「いっ!?いひゃいいひゃいいひゃい!!」
「やさしく、丁寧に、手渡しで、献上しろ。このグズ」


まぁたやってるっスよー
あいつらも懲りねぇな
ほっとけばいいのだよ
いっつも楽しそうだよね〜
あれのどこが楽しそうなんですか
久遠ちゃん泣いてるよ!?

ああ、彼らの声が遠く聞こえる。
ていうか見てるなら助けてくれたっていいじゃないか!理不尽な奴らだ!!


「はなひて!!」
「今度からはちゃんとするんだぞ」
「わあった!!わあったーー!!」
「・・・ふん。最初からそうしていればいいんだよ」


私の幼馴染みである赤司征十郎という男は、私に対してだけ横暴で、本当にどうしようもない。
そんな彼の幼馴染みである私は、人に従うことが嫌いなくせに性根も弱くどうしようもない。

これからもずっと征十郎は私をこき使うだろうし、私もそんな彼に結局は逆らえないまま生涯を終えるのだろう。

横暴で悪魔で帝王な征十郎は嫌いだけど、


「・・・はい、汗ふきタオル」
「ああ、ありがとう。よくできたね」


こうやってやさしく頭をなでてくれる征十郎は、嫌いじゃない。


わらべうたと二足歩行
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