血にまみれた装束をそのままに、デイダラと分かれて一人いつもの場所へと向かう。
いつの頃からかさだかではないが、そこがオレのいわゆる"帰るべき場所"となっていた。
人を待つのも、待たせるのも嫌いだ。
だが、人に待ってもらっているという事実、そこから幸せというのものも感じていることは否めない。幸せなんて、オレが遣ってもいい言葉なのか、はたしてそれはわからないが。

自然と速まる足を止めることもせずに、しまいには走ってしまっている自分に笑いがこみ上げる。

見えてきた家のノックすれば、期待に弾んだあいつの声が聞こえるのだろう。
いや、わざとノックもせずに入ってみるのも面白いかもしれない。なんて、いたずら心まで芽生える。一応自分の歳は把握している。
それでも。
驚きに染まる顔、うれしそうな顔、拗ねている顔・・・今日はどんなあいつが見れるのだろうか、なんて考えてしまう。

恋は盲目とは、よくできた言葉だ。
どんどんと露になる新しい自分に戸惑いながらも、そこに感じるのは確かな愛おしさだ。


「あ、サソリ!」


ぴたりと足を止めると、ドアの前に立ったそいつ、久遠がうれしそうな顔でオレに近づいてきた。
ずっと日に当たっていたのか、少し頬が赤い。
生身ではない手でその頬を触れば、くすぐったそうに身をよじった久遠は小さく笑った。


「なんで出てきてんだ。日向だぞ」
「さっきまでは日影だったもん」
「・・・焼けるとか、そんなことは別にどうでもいいのかお前」
「家の中は暇。サソリ待ってる時間ずっと家の中なんてつまんないもん」


だからって、外ですることもねぇだろうが。

正論を述べれば、久遠は首を横に振った。
やけにニコニコしている。気持ち悪ぃな、なんて悪態をつきながら髪の毛をなでれば、また面白そうに小さく笑った。


「遠くを通る人を見てね、サソリかな?って期待して違った時の切なさったらないね。新しい発見だよ」
「・・・はァ?」
「ていうか、すごく遠くに見える人影でも、サソリだと一瞬期待するけどすぐに違うなってわかっちゃうの。なんでなんだろうね」


きっとずっと見てるからだね。

ふんわりと笑ったこいつの表情が、オレは好きだ。と、気づいたのは最近である。
胸の奥を妙にくすぐる何か。ああ、オレはまた幸せというものを噛み締めている。


「んな暇あったら家事のひとつやふたつでもしとけ」


そして相変わらず可愛げのないことばかりを口走るのだ。

華奢な久遠の腕を引いて、家の中に入る。


ただいまの音

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