「久遠」


あたしの名前を呼ぶこの低くてかっこよいお声は!!!
すばやく部屋のドアを開けて抱きつこうと試みる。だけどそれは彼の手によってさえぎられ、ていうか逆に、


「・・・え、イタチ兄さん・・・!?」
「・・・・・・・・・・・はぁ、」


後ろ手でドアを閉め、驚くことにイタチ兄さんの方からあたしに抱きついてきた体制のままベッドに腰掛けられた。
え、ちょっと待って、待って、ほんと待って。

なにこのおいしい状況!?!?

おいしいすぎて逆に何をすればいいのかわからない誰か教えて禿げそう。
心臓がばっくばっくばっくばっく、うるさい。
かちんこちんに固まるあたしを余所に、イタチ兄さんのスキンシップはどんどんエスカレートしていく。
すべすべの肌があたしの頬に触れる。大きな手があたしの背に回る。サラサラの髪の毛がくすぐったい。


「・・・・・・久遠」
「はっ、ひゃい!」
「・・・ふ、」


なぜ笑うんだ兄さん。今のあたしの思考回路じゃあ到底理解できないべよ。
てか待て、これほんとにイタチ兄さんですか?
兄さんってこんな甘えてくるキャラでしたか?


「い、あ、い、イタチ兄さん・・・?」
「なんだ」
「あの、イタチ兄さんですよね」
「・・・ああ」


あたしの言わんとしていることがわかるのか、イタチ兄さんは体を離してあたしの肩に手を置いた。
薄い笑みを浮かべている彼はいつみても本当にかっこいい。世界一かっこいい。いやサソリさんもかっこいいけど、今はイタチ兄さんまじでかっこいいやべぇ鼻血出そう。


「・・・お前の傍は、落ち着く」
「っ!」


兄さんそれは反則ですよ!?
危うく気絶しそうになったところで、また抱きしめられた。
今日この時間だけで、あたしは何度死にそうになるのかわからない。

でも、イタチ兄さんのためなら死んだっていいかもしれない。
なんて思ってしまうあたしは、本当に愚か者なんだろうなあ。でも、それでもいい。


「いつでもカモンですよ!」


彼の癒しになれるなら、なんだっていい。


甘い毒を体にもってる
どれだけ強くたって、所詮はただの人間にすぎない

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