大輝の大きな体がこたつを占領してしまうと、わたしの入るスペースはいつもなくなってしまう。
今日だってほら、こたつに寝そべりながらいけないモノを拝見してる彼にこたつはほとんど占領されている。もういっそ大輝の上に座ってやろうか。
そう考えるもちょうど夕飯の準備に取り掛かる時間だったのでやめておく。なんとなく悔しいけど、まあ惚れた弱みって言うやつだ。


「できたら呼べよ」
「・・・わかってるよ」


ほんっと、なんでこんな横暴なでかくてバスケと巨乳にしか興味のない男なんか選んじゃったんだろう。
つくづく自分の趣味が不思議である。

エプロンをつけてキッチンに向かおうとすれば、急に腕をつかまれて危うくしりもちをつきそうになった。
にらむようにして大輝を見る。変わらない表情の彼に「なによ」と低い声で問えば、形のいい唇がわたしの名前をつむいだ。


「久遠」


いつもより若干低い声は、なにかまじめな話をするときの癖だ。
それを知ってるのはもしかしたら、わたしだけかもしれない。場違いな優越感を感じながら、小さく首を傾げる。

よっこらせ、とこたつから体を出してあぐらをかいた大輝。


「言いたいことがあるなら早く言ってよ、夕飯の準備遅れちゃうよ?あと読まないならその雑誌閉じて、汚らわしい」
「汚らわしいってなんだ汚らわしいって、ほれ」
「うわっ最悪!彼女にそんなの見せる?普通」


わざといかがわしいページを見せてきた大輝の頭を叩く。
大して痛くもなさそうに「いてぇ」と叩かれた部分をかく彼にいらついたからもう一度叩いておいた。


「なあ、久遠」
「だっから、なに!さっきから名前呼ぶだけ呼んどいてエロ本のページ見せてそれで終わり!?」
「んな怒んなって・・・」
「わたしは忙しいの!ぐーたら大輝とは違ってね!これから夕飯の準備だって言って、」
「これからも毎日、飯作ってくれるか?」
「・・・は?」


何いまさら、と言おうとして口をつぐむ。
左手の薬指に、なんだか冷たい鉄のようなものが触れたから。
ゆっくりと視線を落として見れば、シンプルなデザインのリングが、わたしの指にぴったりとはまっていた。


「・・・やっぱ雰囲気とかわかんねーわ・・・テツにはプロポーズくれぇロマンチックにやれって言われたけどこれで許せよな」
「・・・夕飯の準備してくる」
「おいなんか言えよお前そりゃねーだろ」
「うるっさいな、いつでも、死ぬまで、作ってあげるってば・・・!」


だからどうか、震えてる声には気づかないで。


なまえを呼ぶとき半音下がる癖
もう、ほんと、馬鹿

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