最近の世は便利なもので溢れ返っている。
長門スマホ貸してー、と許可なくオレの制服のポケットからスマホを取り出した久遠は、ナビのアプリを開いて甘味屋を検索している。自分のがあるのに何故そちらを使わないんだ、まったく。
どうせ久遠のことだから、鞄の中のどこかにあるけど探すのが面倒だとかそんなところだろう。
小さくため息をついて空を見上げていると、急に手を引っ張られた。久遠だ。
「どっちだ?」
「右!」
長年の時を一緒に過ごしたせいか、大抵のことは言葉少なでも十分に伝わる。
そんなオレたちの言葉には表すことのできないような関係を目の当たりにしたサソリは、再会したその日から嫉妬心こもる目でオレを睨んでくる。優越感を感じていることは否めない。
なにせ十年も一緒に居たのだから、仕方ないと言えば仕方ないことなのだ。
「久遠、こっちに来い」
ただ、素直ではないサソリと違いイタチは自分のしたいように久遠を動かすことができる。
久遠がイタチの誘いを断るなんて有り得ない。喜んでイタチの隣を並んであるく久遠に、嫉妬よりも母性をくすぐられるような感覚に陥った。・・・オレのキャラ位置とは一体・・・
「まだ歩くのかよ?移動でどんだけかかるんだまったく・・・」
恨みがましい目でイタチを見ながら、サソリがぼやく。
もうちょっとですよーと嬉しそうな顔のまま、久遠はサソリの手を空いているほうの手で握った。「両手に花!いえい!」久遠の笑顔はいつ見ても癒される。
「あ、見えてきたよ!」
久遠の指差すほうを見れば、店の前でなにやら水撒きをしている女性が目に留まった。
見覚えのあるような、懐かしいような、そんな後ろ姿。
口をつぐんだオレ同様、指を差した当人でさえなにか違和感を感じているのか立ち止まりその女性を凝視している。
ふいに、女性がオレ達の方を振り返った。
途端に走り出した久遠。
まさか、こんなところでも再会を果たせるとはな。
偶然か、運命か、走り出した彼女の背を見ながら、両脇に立ったイタチとサソリが小さく笑う。
「小南か・・・久方ぶりだな」
「ああ・・・行かなくていいのか、長門」
「・・・そうだな」
ゆっくりと足を進める。
互いを抱きしめあう彼女らを見て、また笑んだ。
やはり前世をずっと共に居ただけあって、小南の存在はオレの中ではとても大きい。
抱きつく久遠の腕越しにオレを見つけた小南が、そのしなやかな腕をオレに伸ばす。
十年前よりも大きくなった掌を掴み、十年越しの再会を懐かしんだ。
甘味屋独特の服装は、彼女によく似合っていた。