「ぐふふ」


あたし、楸 久遠はただいま盛大ににやけている。
なにってかにって、今日はあたしが愛読しているNARUTOの発売日なのだ!
どれほど待ちわびたものか、きっと隣で盛大に顔をしかめている親友はわかっていないのだろう、失礼なやつだ。

気持ち悪いよ、と一言言われてもあたしはめげない!
早く帰り道で本屋に寄って新刊を手に入れたい!
そんな思いだけしかないんだよ今のあたしには、分かる?分かんないよねごめんなさい。


「はーやっく、放課後こないっかなぁー!るん!」
「るん、とか自分で言わないでよ気持ち悪い」


2回目の気持ち悪い来ました!
でもあたしはめげない!
めげ、ない、もん・・・!


「あーはいはいごめんね泣かないで久遠」
「ずびっ・・・!」


あれ、変だな目から鼻水が。
悲しくなんか、ないもんね!

とにかく早く放課後にならないかなー!
サボっちゃおっかな、うんそうしよう!


「親友よ、止めるな」
「止めないけどチクるよ」


それでもいいさ!
あたしはサボり魔だってことくらい、職員室で話題になっちゃってるから!
なんてったって有名人だよあたし!(ふんぞり)


「あばよっ、親友!君のことは忘れない!」
「私は忘れとくわ」


なんか酷い言葉が聞こえてきた気がするけど気にしない!

休憩時間でまだにぎわう廊下を、あたしは全速力で駆け出した。

待ってろNARUTO!


***


ほくほく。

手に持った漫画の表紙を見て、にやにや。
やっと買えたよどんだけ待ったと思ってたのもう!
じれったいんだからーあっ!

痛い子だよね、今のあたし。
でもそんなの気にしなーい!


「ふんっ、ふんふーん♪」


表紙を撫でながらスキップする。
早く家に帰って読みたいなあー、先の展開を知りたいよね。
てゆーか暁様々だよね!
もうみんなかっこよすぎるん!

信号が青に変わった。
いよしっ、猛だーっしゅ、


「・・・え、」


ドン!

鈍い音が響いた。
気づけば目の前には青い空が広がっていた。
あ、雲・・・
今日は・・・いい天気だったんだなぁ・・・
あ・・・シカマルが雲好きなの・・・なんとなく分かった・・・気がするなぁ・・・、?

なん、で、あたし、
寝てるん、だろ、う・・・?

かすかに感じる鉄のにおい。

・・・・・・・・・・・、

真っ暗になる視界。

・・・・・・、あ。あたし・・・
・・・死ぬ、?


「・・・、ぁ」


せめて、新刊、読みたかったなぁ。

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