「イタチ!付き合ってください!」


鞄を持った手が震えた。
恐る恐る顔を上げてみれば、若干驚いたような顔をした(萌え)イタチが、次の瞬間には小さくため息を吐いて(何故)、優しく笑った(再び萌え)。

あたしの隣ではサソリさんがイタチも誘うのかよと嫌そうな顔をしてる。そんな顔も大好きです。


「どこへだ?」
「甘味屋!」
「行く」
「即答イタチ可愛すぎて禿げる」


あとは一つ上の階にいる長門を迎えに行って、甘味屋デートのメンバーは完璧に揃う。
ふっふっふ、イタチが甘いもの好きってのは漫画を読んでたころから把握済みさ。さすがあたし。この世界にはもう某忍者の漫画は存在しないけど、暁含めたリスペクトキャラの好きなもの嫌いなもの身長体重もちろん誕生日、全て網羅してある。さすがあたし。二回も言うな?ごめんなさい。


「じゃ、長門のお迎えに行きましょう!」


左手にサソリさん、右手にイタチの手を掴んで、あたしは階段を駆け上がった。
これぞ両手に花!!!


***


甘味屋まで電車で三十分だあ?不機嫌そうに言ったサソリさんににこやかに頷く。
電車で三十分、そう三十分もある。
けど、この三十分があたしにとっては最高に楽しい時間なのだ。


「場所はどこなんだ?」
「昨日長門と一緒にインターネットで調べたんだけど、駅から徒歩三分のところにあるらしいよ!あ、もちろん団子とかおいてあるって書いてあった!」
「・・・そうか」
「なにその嬉しそうな顔を隠そうとしても隠しきれてないような微妙な顔!イタチ抱きついてもいい?」
「別に構わない」
「いやん外国行ってそういうのに耐性ついたの?妬ける・・・!」


頬を膨らませば、イタチは少し口角を上げて笑った。
四人で座れるボックス席で、当たり前のように隣に座ってきた長門に頭を撫でられる。
それはドンマイということか、そういうことなのか!

純粋な頃のイタチを返せえええええぇぇえええおのれ外国人め!イタチにキスしたりハグしたりしていいのはあたしだけだ!


「生まれた時から純粋さを忘れてきたような奴がなに言ってんだ」
「なっ、失礼なサソリさん!あたしは身も心も真っ白です!純白です!」
「心はともかく身が純粋じゃないなんて、オレは許さないからな久遠」
「なにを真面目な顔をしている・・・長門」
「長門の過保護と心配性は今に始まったことじゃねぇだろうが。少なくとも転生してからだ。ったく絆されやがって・・・」
「それはお前にも言えることだろう、サソリ」


開き直ってる長門が、軽く鼻で笑いながら言った。
何も言い返せないサソリさんは、ムスッとした顔で頬杖をつき窓の外を見る。横顔完璧。こっそり取り出したスマホで写メっておく。保存完了「消せ変態」・・・ばっちりバレてた。


「麗しいサソリさんの横顔ですよ!?あたしのスマホにサソリさんの横顔が保存されてるんですよ!?これ以上にすばらしいことないですよ!?」
「得すんのお前だけだろうが。消せ」
「そんなことない!長門も得するよね!」
「しない」
「毎晩一緒の布団で十分この保存した写真眺めてから眠りに就こうよおおおお!」
「聞け久遠。オレはサソリのことをそういう目で見てないからそんなことしたら吐き気を催すんだ。わかるな?」
「そこまでじゃねぇだろわかんねぇよ」
「いや問題はそこではない。長門、久遠・・・お前達、一緒の部屋で寝ているのか・・・?」


真剣な顔つきのイタチに肩を掴まれる。
整った顔があたしの目前にいいいいい!萌え死ぬ禿げるどうしよう幸せ。
だけど彼にとってそんなことよりもあたしと長門が一緒に寝てるということのほうが問題のようだ。


「一緒の部屋どころか同じ布団だが・・・?」


駄目なのか?と心底不思議そうな顔で首を傾げる長門(天使)にすかさず駄目だろと突っ込んだサソリさんは、もうあたしの中では一番の突っ込み役だ。
まあそりゃあ年頃の男女が同じ部屋で同じ布団なんて、傍から見ればすごくおかしいことなのかもしれない。けど、それが当たり前になっているあたし達からすれば、普通のこと。
むしろ離れることのほうが考えられないのだ。

しばらく黙り込んで、そしてため息をついたイタチとサソリさんは、何も言わずにケータイをいじったり窓の外に視線を戻したり。


「安心しろ、手を出すなんて有り得ない」


あの頃と比べて低くなった声で、長門は静かに呟いた。
そうしてまた、あたしの頭を撫でるのだ。

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