「で」


目の前に胡坐をかいて座る飛段を睨む。
抱えた大きな鞄と先ほど追ってきていた黒い集団から見るに、なにか厄介ごとに巻き込まれてることだけは見て取れた。
問題は、別のところにある。


「なんで湯隠れ組との取引の場所に、お前がいるんだよ・・・うん?」


そう。
オレが特大花火を仕上げて持っていった取引場所に居たのは、まさかの飛段。
驚くより早く黒い集団が現れ、今に至るってわけだ。
理解したくもないが、取引場所にこいつが居たってことは・・・つまり、そうなんだろう。


「お前・・・まさか組のやつに引き取られてたのかよ・・・」
「つーかデイダラちゃんは花火職人かよ似合いすぎだろぶふっ」
「爆ぜろ、うん!!」


馬鹿にしたような笑い方は前世からのそれで、苛立ちが募る。
なんで一番最初に再会するのがよりにもよってこいつなんだよマジで。萎える。

飛段は胡坐をかいた膝に肘を置き、視線をオイラの手元に持ってきた。
仕上げた特大花火の値段は、大きさだけあって相当の値段がつく。あの黒い集団は、その情報を聞きつけて金を掻っ攫いにきたってとこだろう。

ずい、とぶっきらぼうに渡された金を受け取り、仕上げたそれを渡す。


「おっも!!」
「特大だからな、うん。つーかこの金のケースも無駄に重いぞ」
「お前んとこぼったくりだろうがよぉ。金かかるぜまったく」
「そんな特大注文して、何に使うんだよ・・・うん?」
「オレのとこの組とどっかの学校の校長が交友関係にあるとかで、学園祭に花火を使いたいんだと。それでその花火の用意を頼まれたとかなんとか言ってたぜぇ」
「ほぉ・・・変わった学校だな、うん。まあ、打ち上げる時はまたオイラんとこに依頼くるだろうし、心構えだけでもしとくか」
「ったく、んなの本番に直接持っていきゃいいじゃねぇか、なあデイダラちゃん!うちの親父が一度手元に置いてその校長とデカさを拝んでみてぇとか言うから」
「・・・飛段、お前家の奴とうまくいってんだな。うん」
「・・・・・・ゲハッ、まァな」


お前んとこはどうなんだよ、という答えはスルーして、オイラは立ち上がった。
そんなの言わなくても伝わるはずだ。
前世より平和なこの世界の住民は、けっこうみんな温かい。


「院を出て十年かァ・・・そんなに経つのに今日の今日までお前と会わなかったってのも不思議だな。ゲハハァ!」
「オイラは一番に会うなら久遠が良かったけどな」
「そんなんオレもに決まってんだろーが馬鹿かデイダラちゃんよぉ」
「馬鹿とかお前に言われたくねぇよ!うん!!」


どこでなにしてんだろうな、と空を見つめる飛段。
兄妹のように接してた二人を思い出す。
小さかった久遠も、きっと大人に近づいているのだろう。変態さも、抜けているのだろうか。いや、きっと抜けてねぇな。

想像して少し笑ってしまえば、隣で空を見上げる飛段も口元に笑みを浮かべていた。


「・・・じゃあな、またどうせ近いうちに会うだろ」
「おー。あ"−お前が久遠とか言うから会いたくなっちまったじゃねぇかよ」
「知るか」


思い出しているのか、騒がしくなってきた飛段を置いてその場から立ち去った。


***


「べぇっくし!!」


大きなくしゃみが口から飛び出した。
皿洗いをしていた長門は、呆れたような瞳であたしを見る。


「久遠・・・もう少し女らしくできないのか?」
「だって思いっきりやったほうが気持ちいーじゃん!ね?」
「・・・オレでもあんなのはしない」
「きっと誰からあたしの噂してるんだよ!いっつも長門達と一緒にいるから妬まれてんのかな」
「妬まれる?」
「こっちの話〜」
「・・・? ああ、それより五月に入ったらすぐに学園祭だぞ。久遠たちのクラスは何をするんだ?」


残りの一枚を洗い終えた。
受け取って布巾で雫を拭いながら、柔らかい表情の長門に萌えを感じているなう。何度も言ってるような気がするけど、長門マジ天使。略してマジ天。


「まだ決まってない!っていうかサソリさん居るしホストとかしてほしい!!サソリさんのスーツ姿で死ねると思うそれだけでもう十分」
「死ぬな」


でも、入学してすぐに学園祭って、この学校も変わってる。
長門もイタチもサソリさんも居るし、あんまり気にしないけどね!


「長門のとこも遊びに行くから!!コスプレして待ってて!!!」
「こら、興奮するな皿が割れる」

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