「ぱんぱかぱーん、ぱっぱっぱぱんぱかぱーん!」


奇妙な鼻歌と共に目の前に差し出されたおしるこに、緑間ははぁ?と眉根を寄せた。
宇宙の果てまで意味がわかんねぇぞお前と呟く青峰に、久遠はお前のその言葉のほうが意味わからんと言い返して緑間におしるこを押し付けた。

おしるこは緑間の好物である。が、何故このタイミングでおしるこなのかが誰も理解できない。
当の本人は満足げな顔で早く飲みなよ、と催促している。
自分で飲みたいのならオレはいらんぞとおしるこを返す緑間に、久遠は眉を吊り上げてそんなもん飲みたくないわ!と半分叫び声で反論する。

ますます意味が分からない緑間は青峰に視線で助けを求めた。
青峰も眉根を寄せ、久遠の奇行を見守って(?)いる。

久遠はちゃらちゃらと財布を見せびらかして、ふふんと鼻を鳴らした。


「お金入ったばっかでリッチだからね、買ってあげたのよ。珍太郎最近誕生日だったでしょ?」
「は?」
「んもー照れなくていいって!遠慮しないで飲みな!出血大サービス!」


たかが百二十円で出血もクソもないだろうと思ったが、それ以前に問題ありな発言があった。

誕生日?誰がだ。
訝しげな視線を送る緑間と青峰に、久遠も訝しげな視線を返す。

まだ肌寒く、制服の下にカーディガンでも着ておかないともたない季節である。
キセキの世代ナンバーワンシューターの緑間の誕生日、それは緑が覆い茂り温暖化によって毎年上がり続ける気温にひいひい言いながらも部活に没頭し、体中の水分を出し切ってしまうのではないかと思うくらいに暑い・・・夏。夏である。


「・・・あー、ちなみに聞くけどよ、お前緑間の誕生日知ってんのか?」


呆れた風に頭をかく青峰を軽く睨み、久遠はスマホを取り出して何かを確認し始めた。
大方、アドレスを交換した時にでも誕生日を聞いていたのだろう。確認した久遠の目がみるみるうちに見開かれていく。
ため息をつき、緑間はおしるこのプルタブをきった。いただけるものはいただいておこうではないか。


「・・・なんか勝手な固定概念で珍太郎の誕生日冬だと思ってたわ七夕だったとか、なんか妙に納得さすが珍太郎って感じ」
「・・・それは、褒めてるのか貶してるのかよくわからないのだが」
「どっちもだよ。あーなんだあーお金無駄に使っちゃ・・・って珍太郎飲んでるし!」
「お前がくれたのだから遠慮はしない」
「くっそう・・・!」


緑間の誕生日が冬とか、お前どんな勘違いしてんだよと笑い始めた青峰。そんな青峰に軽くチョップを入れながら、久遠は緑間を見た。

おしるこを持つ手は自分のそれよりも美しく、こいつ生まれてくる性別間違えたんじゃねぇのと言ってやりたくなるくらいだ。
だが緑間が女だったら、絶対に関わりたくない人物だっただろう。緑間は緑間だからこそ緑間なのだ。若干意味が分からなくなった。


「なんていうか、珍太郎って美形じゃん?」
「ぶふっ!?」
「うわ、吐くなよ緑間汚ねぇな」
「げほっ、・・・!、楸が、いきなりおかしなことを、言うからだろう・・・!」
「えー?本心だよ」


カッと赤くなった緑間を見て、青峰は納得したように頷いた。


「こいつ赤くなるとクリスマスカラーになるからか」
「そう」
「どんな理由なのだよ!」


それにもう今はクリスマスの季節ではない。

断言した緑間に、そういう問題じゃねぇよとツッコミが入ったのは言うまでもない。


いたずら
サプライズってことで!
だから何のサプライズにもなってないのだよ。

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