イタチは小さく笑ってあたしの頬に触れた。
喉を通り越して目元まで到達している涙に気づかないふりをして、あたしも笑った。


「イタチ、げんきでね!・・・病気とかしたらゆるさないからね」


もう苦しむイタチの姿は見たくないからね、と小さくなっていってしまう声で言う。
イタチはわかってると頷き、顔を近づけてきた。

ここ最近、ずっとイタチはあたしの隣に居た。
別れ行く今日まで傍に居たいと、珍しく弱った様子のイタチに驚きと喜びと、大きな寂しさを感じながらあたしもイタチの傍を離れなかった。
イタチの涙を見た。子どもっぽい姿を見た。
今日からは違うところで、きっと前世のようにたくさんの我慢をしながら暮らしていくのだろう。少しでも、もっと、イタチがわがままに暮らせるような、そんな優しい家庭であってほしいと願う。

見上げた夫婦の柔和な顔立ちを見て、少し安心する。


「じゃあ・・・行こうか」


イタチの肩に手を置く男の人は、大丈夫だよとでも言うかのように微笑んだ。
小さく頭を下げて、バイバイと呟く。


「久遠」


一度あたしの名前を呼んだイタチは、何も言わずに困ったように笑って踵を返した。
あたしも玄関に立つメンバーのもとに駆け寄る。
振り返ってイタチの背中を見送る。イタチは名前を呼んだきり一度も振り返らずに、夫婦に連れられて車に乗り込んだ。

ぽん、と誰かの手があたしの頭に乗る。
サソリさんだろうなあと思いながら、あたしはイタチを乗せた車が見えなくなるまで見送った。


「さみしくなりますねぇ」


鬼鮫が呟く。
角都に引き続き、イタチも居なくなった。寂しさは拭えない。けど、きっと。

きっとまた会える。

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -