ふいに名前を呼ばれた気がして振り向く。
聞き間違いじゃなくて、そこには無表情なオビトが腕を組んで立っていた。忍っていうのは、いちいち気配消さなくちゃいけないのかな、と不思議に思う。
何も分からない私をただ傍に置いてくれるのだから、そんな事は言わないけど。

高い岩の上で膝を立てて座っていた私は、もそもそと動いて一人座れるだけのスペースを空ける。
無言で歩いてそこに座ったオビトの首元が寒そうで、私は自分の首にまいたそれをとってオビトの首に巻いた。
うわあ、寒い。


「・・・なにしてる」
「なにって・・・」
「それではお前が寒いだろう、馬鹿め」


馬鹿とはなんだ、馬鹿とは。

せっかくまいてあげたマフラーを十秒と経たずにとったオビトは、強い力で私を引き寄せた。
うわ、と思わず驚いて声が出る。
ふわりと首に温かみが戻ってきて、それから背中に彼の腕が回った。

こうすればもっと温かいだろう、とでも言うように。

確かに温かいけど、うん、なんていうか少し気恥ずかしいと感じるのは私だけなのか。
顔を上げて見えたオビトは相変わらず無表情だけど、どこか満足しているような、そんな感じで、なんだか嬉しい。

緩む頬をそのままに額を彼の胸板に押し付けた。


「寒いね」
「そうだな」
「でも、寒くないね」
「・・・そうだな」


たぶん、私は、彼が居るなら何処へ行っても寒さなんて感じないんだろう。
頬を撫でる温かい感触に、目を閉じて身を委ねた。


冷たい静寂を咀嚼
この手が冷たくなってしまうその時まで

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