目覚めた時、人数が足りないのは目に見えて分かった。
ひゅっ、と一瞬息が出来なくなる。オビトを見れば、彼は少し目を見開いて、そして静かに瞳を閉じて、開けて、小さく何かを呟いた。

嘘、だったのかあ。わかんなかったや。

涙がこぼれないように必死で唇を噛み締める。
隣に腰を下ろした小南が、優しく背中を撫でてくれた。

涙は、堪えた。


***


「久遠〜、アンパ○マン見ようぜぇ」


間延びした覇気のない声があたしを呼ぶ。
ぬいぐるみに持たれかかってだるそうにしている飛段が、小さな手であたしを招いた。うん、と二つ返事で頷いて彼の傍に駆け寄る。

慣れた風に膝と膝の間に座り込めば、飛段も慣れたようにあたしの頭に顎を置いた。
いつもは痛いといって退けてやるけど、なんだか今日はそんな気になれなかった。

こんなにもこのアニメが面白くないと感じたのは、ここに来て初めてだった。
ぐう、とあたしの頭に顎を乗せたまま寝ている飛段だって、本当はこれを見たくてテレビをつけたんじゃない。また緩んできた涙腺に、あたしは無意識に唇を噛んだ。

もう、角都の馬鹿。

ぎゅ、と腰に回った飛段の腕に力がこもる。
飛段、と小さくこぼせばるせぇなぁとだらけた返答をいただいた。


「おまえ、角都にんな顔しろって言われたのかよ」
「・・・言われてない」
「いちばんさみしい思いしてんのは、あいつじゃねぇの?」


まあ、暁の中じゃいちばん長くかかわってきたから、オレにはなんとなくわかるぜ。
かっこつけやがって角都のやつ。さみしいって言ってるようなもんじゃねぇか。
さいごに顔くらい見せやがれよなぁ?なあ、おまえもそう思うだろ、久遠。

ぐりぐりとあたしの背後から頭を押し付けてくる飛段。


「いたいいたいいたい!ぐりぐりしないでよ!」
「るっせー、いつまでしけた顔してんだよバァカ」
「わかってるもん!」


角都がどう思って、あたし達が知らない間に院を後にしたか、なんて。

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -