あたしの名前を呼ぶ大きな声に、ぼんやりと辺りを見渡す。
少し怒ったような顔をした長門が、一度起こしたのになんでまた寝てるんだ、と文句をよこしてきた。ご、ごめんなさい。


「もしかして遅刻しちゃう?」
「・・・急げば間に合う。ただし、朝食は抜きだ」
「昼間で持つかなあたしのお腹・・・」
「自業自得だ」


てきぱきと布団をたたむ長門を眺めながら、制服に腕を通す。
彼の腰にまとわりつく子ども達。妬ける!あたしも!と同じように抱きつけば、無言で頭を叩かれた。痛い。


「早く行くぞ。あいつが待ってる」
「へ?」


有無を言わさない口調であたしの手を取って、玄関まで駆ける長門。
そのいつもよりも落ち着きのない行動に、あたしは小さく首をかしげた。あいつって誰?サソリさん?もしかしてサソリさんも一緒に登校することになったとか!?うそんそうなら早く言ってよ長門ってばあっ!
早足の長門を逆に引っ張りながら、それならそうと早く言ってよね、と靴を履く。
玄関の向こうに見えるシルエットに、あたしは胸をときめかせた。一緒に学校に行くために朝早くから迎えに来てくれるなんて、なにその素敵展開!

待っててくださいね、今世紀最大のハグをかまして・・・


「・・・久しいな、久遠」
「え、・・・え、」


柔らかい笑みを浮かべて小さく両手を広げるその人は、その人は、・・・

視界がぼやける。


「・・・長門。どうやらお前の読みは外れたようだが?」
「ふ、そのようだな」


何がどうなっているのかわからない。長門は知ってた?なんで?
あたしは知らなかったのに?

近づいて、あたしの頬に手を伸ばすその人に肩を揺らす。
若干困ったように笑ったその人は、大きな手で両頬を包み込んだ。いつか、引き取られていく子どもに言い知れない不安を感じたあたしに、同じように、その人は、笑ったのだ。その時小さかった手が、今はこんなにも。


"オレたちはお前の前からきえたりしないから"


そんなのできっこないってわかってた。
現に、今孤児院にみんなはいない。それでも、再会できるその日を心待ちにして、ふいにこみ上げる涙も我慢して、みんなが好きだという笑顔で過ごしてきた。

奇跡を、感じる。

いつか、彼は言った。


「もしお前の前からきえるようなことがあったなら、なにがあってもどんなことをしてでも、かならず」


会いに来ると、言っただろう。

こつんと額を合わされ、あふれ出した止まらない涙を拭いながら、あたしは彼の腰に抱きつく。


「っいだぢぃいい・・・!!」


ありがとう。

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