放課後、という言葉は、授業で疲れた体や精神を一瞬で元気にさせるほどの魔力を持つ。
でもそれは部活をしてる生徒にとっては、ほとんど地獄へ連行されるのと等しい、そんな呪いの言葉だ。いや、少し言い過ぎたかもしれない。部活を苦に思ってない人だって、わんさか居るのだ。ちなみに私は前者です部活とか大嫌い。

桃井と合流して、一方的に語られる黒子についてを聞き流しながら、生徒であふれかえる廊下を歩く。途中で合流した青峰に、今日も死んでんなあと頭を叩かれた。放っといてくれ。


「楸」


聞きなれた声に振り向くことなく、その声の主が追いつくのを待つ。
お前、止まるくらいしたらどうだと肩を掴まれ渋々その緑に目を向けた。


「赤司が呼んでいるのだよ」


ああ、部活に行く前に地獄を味わうことになりそうだ。


▽▲▽


苗字にも赤がついてるし、本当に赤が似合う人だ。
この人が血を浴びても、きっと似合う気がする。むしろ神々しささえ放ってしまいそうな。

窓の外を眺めていた赤司の前の席に座る。
視線をまじえないまま、赤司はどこか楽しそうに笑った。私には君が何を楽しんでるのかわかりません。


「来たね」
「呼ばれたからね」
「バスケ部には慣れた?」
「何言ってるのかさっぱりだよ赤司。君に無理矢理マネやらされて一年以上経つんだよ?」
「半強制的に、だ。最終的に決めたのはお前だよ」
「決めさせたんでしょ」


だからって、今さらどうこう言うつもりもないだろう?

赤司の言葉に押し黙る。言い返せないのが少しだけ悔しい。
少し八つ当たり気味に、持ってた鞄を荒々しく床に落とせば、うるさいと一喝されてしまった。


「で、どういったご用件で?」
「別にこれといった用はない」
「・・・部活行かなくていいの」
「強いて言うなら、」


無視か。
出そうになった暴言をすんででおし留める。窓の外に視線を戻した赤司の頬に、夕暮れの綺麗な光が差した。


「夕日が綺麗だから、君にも見せてあげようと思って」
「・・・どこからでも見れるじゃん、そんなの」


荒立っていた気持ちが一瞬で静まる。
私と赤司しかいないこの空間で、沈黙はなにも重たいものじゃなく、心地いいわけでもないけど、時間だけが過ぎた。

目の前で夕日を眺める赤司の思考は相変わらず、読めない。


「そろそろ部活に行ったほうがいいんじゃないの」
「・・・そうだな」


静かに立ち上がった赤司。ならって立ち上がると、差し出された手に目を見開く。

ほんとに、何を考えてるの、赤司征十郎くん。


「久遠。オレは君の事を案外気に入っているんだよ」
「・・・それはどうも」


やる気のない態度は気に入らないけど、それでも辞めさせないのは、そういうことだ。

なにがそういうことなのか、よくわからなかったけど、いつもの赤司より少し人間味のある赤司が、未だに戸惑う私の手をふんわりと包んだ。


人間ごっこしましょ
なんだ、ちゃんと体温あるじゃん

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