昔のあいつは、ていうか昔も今もよく笑うやつだった。
物事に執着しない、悪く言えば、軽い。でもそれは嫌な軽さではなくて、重んじるところはきちんとしていたし、そうだな・・・まあ昔も今もあんなんだ。

何歳から一緒だったって?んなの覚えてるわけねェだろ、たぶん生まれた時からずっと一緒だ。
遠慮なく互いの家行き来して、風呂も一緒に入ったり、一緒の布団で寝たり。
ただ、そうだな。男と女だってことを意識し始めたのは、あいつが小五の時だった。はァ?遅い?うるせェな、自覚はしてるよ。でも一緒に居すぎて隣にいるのが当たり前だったんだ。感覚も鈍るってもんだろ。

女子の発育って、ほら、男子より早ェじゃねぇか。んだそのやらしい目は。あ?しばくぞコラ。別にオレは久遠に特別な感情を抱いたことは一度もねェよ。それはあいつも同じことだろ。
まあ、家族愛みてぇな奴はあるぜ。なんてったって付き合い長ェからな。そんな恨みがましい目で睨んだってこの事実は変わらねーよ。
あいつの一番近くにいるのはオレだ。これもお互い様だな。

意識し始めてどうなったか?
あー・・・勝手に気まずくなってたのはオレだけだったな。あいつはなんにも感じちゃいなかった。だから、できるだけ、自然に、離れようとはしたな。
バスケ部に入ってっからそれを理由にいろんな誘いを断って、疲れたからってあいつの家にも行かなくなってた。
なんだその顔。まだケツの青い餓鬼だったんだよ。オレだってお前と一歳しか歳差ねェんだぜ?

そんなオレに気づいてたのかそうじゃねェのか、まあ人一倍聡いからきっと気づいてたな。
中一の夏休み・・・あいつが小六のときだな。
自由研究の宿題手伝えって家に押しかけてきたことがあった。それまでに誘いを何度も断ってたから、後ろめたさもあって二つ返事で頷いたんだ。
そしたら、あいつ、めっちゃくちゃ嬉しそうな顔してよ。珍しく突進してきて、顔は見えなかったけど、たぶん泣いてたな。声震えてたから。

その時感じたのが、でっけェ罪悪感と、それから―――


「珍しく話し込んでるね、造ちゃん」
「あっ、久遠ちゃん!お邪魔してるっス!」
「どうぞどうぞ〜」
「ここてめぇの家じゃねぇだろが。何しに来たんだよ」


何か白い手提げを片手に入って来た久遠ちゃん。
なんとなく二人の昔話を聞きたくなったオレが部活帰りにおしかけたこの部屋に、彼女はなんの戸惑いも、ついでにノックもなく。

これ、みかんいっぱいもらったからってお母さんが。

そう言って虹村さんに乱暴に押し付けた手提げ。
そのままベッドにぼふんと突っ伏すものだから、その姿が無防備すぎて、この二人の間にある壊せない絆が垣間見える。壊そうなんて思ってもないけど。

ずっと暖かい場所に居たのか、ほてった頬も、髪の毛の間から覗くその白い肌も、オトコノコを煽るには最高の要素。
思わず見惚れてしまったオレの頭を叩いたのは言わずもがな虹村さんで、そのままつかつかとベッドに歩み寄ってばしんと彼女のお尻を叩いた。


「いっ・・・たいなあ、なに造ちゃん」
「なに、じゃねぇなにじゃ。てめぇ寝てねェで黄瀬の相手でもしてろ、色々うぜぇこいつ」
「酷くないっスかオレの扱い!」
「おいでりょた君」
「犬みたいに扱わないでほしいっス!でも行くぐほっ!」
「やっぱいーわこいつそこら辺に捨ててくる」
「行ってらっしゃーい」
「そこはとめて久遠ちゃん!」


安定のオレの扱いに若干の悲しさを覚えながら、ヒラヒラと手を振る久遠ちゃんを尻目に部屋を出た。って、ほんとに外にほっぽり出す気っスかこの人!?


「やらしい目向けてんじゃねェよ黄瀬。しばかれてェか?」
「すいませんすいませんすいません!でもよくあんなの前にして平気でいられるっスね・・・」
「てめぇは自分の姉ちゃんにしっぽ振んのか?」
「・・・・そゆことっスか」


わかったらさっさと帰れって、ほんとに帰すつもりだったんスかぁ!?


前髪をいじる癖だって変わってないのに
愛しいと思う、気持ち

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