「くっだらねー」
聞き覚えのある口癖と、声に、心臓が止まりかけた。
騒がしくなった教室内にさっき気づいたあたし(何を考えてたかって?そりゃあいつ長門に会いに行こうとかもう長門が恋しくなってきたなとか弁当一緒に食べようとか以下略)は、その騒がしさの原因を突き止めようとかは思わなかった。
だけど、でも、聞き覚えのありすぎるこの声に、振り向かないわけにはいかない。
ちらりと見えた赤い髪の毛にもう一度心臓が止まりかけた。やばい、なんで、ここに、
この、教室に、
「サソリさん!!?」
大きな声をあげたあたしにクラス中の視線が集まる。
当の本人はゆっくりとあたしを振り返って、ゆっくりと、ゆっくりと、目を見開いた。
どきどきどきどき、心臓がうるさい。
「・・・・・・・・・、・・・、久遠・・・?」
愛しい彼の口から紡がれたあたしの名。
思わず駆け出して抱きつけば、痛いくらいに抱きしめ返してくれた。
サソリさん、サソリさん、
「踏んでください・・・!」
***
「久方ぶりだな、長門」
「サソリ・・・、久しぶりだな、・・・つかぬ事を聞くが、久遠のその頬の赤みは」
「・・・・・・お前なら少しくらい想像できっだろ」
じんじんと痛む右頬に幸せを感じながら、呆れ顔をする長門に泣きつく。
うう〜長門ぉ〜と頬ずりすれば、濡れたハンカチを押し当ててくれた長門の天使ぶりは健在です。
相変わらずなのな、とため息をつくサソリさん麗しい。麗しい。麗しい(大事なことなので本当は三回以上言いたいけどここまでにとどめておく)
「サソリさんも相変わらずのかっこよさですほんともうなんですかその絶妙な着崩し具合惚れ直します踏んでいや舐めてもいいですか!!?」
「落ち着け久遠。この指は何本に見える?」
「いやそれおかしいだろ。つーか息継ぎせずに言い切る久遠ってマジで相変わらずすぎてキモイ」
「そんな心にもないことをっ!照れ隠しですよねわかってますっ!」
「無駄にポジティブなのやめろ黙れ」
もう何も考えずにサソリさんに抱きつけば、ため息をつきながらも受け止めてくれた。好き!
歓喜しすぎて滲む視界。無理矢理目元をサソリさんの制服に押し付けてぐりぐりして、笑う。サソリさんが好きだという、笑顔。
「・・・おう、また会えたな」
「はい!!」