だっりぃな。
そう思いながらきつくない程度に着崩した制服のポケットに手をつっこむ。
忍の時から優秀だったせいか、小学校・中学校ともに勉強面でも運動面でも、困らなかった。ただ少し面白くない日々は孤児院を出たあの日から続いている。

赤砂のサソリと呼ばれてたこのオレが、今や美容師の家に引き取られた一般の高校生だ。もちろん高校にも難なく合格。くだらねぇ問題ばっかで試験当日も面白くなかった。
両親共に美容師のため、必然的にオレもそっちの道に進むことになるらしい。
今は自宅で修行中だ。人の髪の毛をいじるのは嫌いじゃねぇけど、でもやっぱ一番触ってて気持ちがいいのは言わずもがなあいつの髪の毛だ。そうだ、久遠。元気にしてんのかあいつ。


「・・・、にしても」


敷地内に入った途端に浴びせられる視線の量。
まあ、髪の毛は真っ赤だし目つきもいいほうじゃねぇけど、こんだけ浴びりゃ嫌気も差す。こっち見んなマジで。
いや、入学式に行かなかったから余計に注目浴びてんのか?
だって人の話聞くだけの式に行きてぇ奴なんているのかよ。

気にせずにずんずんと歩いて、自分の教室を探す。
この高校はやたらと人が多い。人ごみは嫌いだ。よほど不機嫌そうな顔をしてるのか、自然と人が避けていく。


「一年五組か・・・」


意味も無く呟いて戸を開ければ、にぎやかだった教室内は一気に静まり返り、そしてまた騒ぎ出した。

え、だれ?昨日いなかったよね?
髪の毛赤っ、不良?
えっでもかっこいい!


「・・・くっだらねー」


また退屈な三年間になりそうだ。


「サソリさん!!?」


・・・幻聴か?

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