無理をして笑っているわけでもなさそうな久遠に安心すれども、疑問がわかないわけではない。
けろっとした表情でオビトと共に部屋に戻ってきたそいつ。
何を言ったのか、どちらにしろ久遠を安心させたのがオビトだということに、場違いにもどうしようもない嫉妬心を拭えないのは確かだ。
重い空気を取っ払うようなその笑顔が、今だけは少し憎い。
難しい顔をしていたのか、どうしたのイタチと小南に問われる。その顔は少しニヤついていて、分かっているなら聞くなと少し棘のある返事をすれば意味深な笑みをそのままに小南は膝に乗る黒ゼツの背をなぜた。
「イタチーっ」
「、!」
腹に突進してきた久遠を受け止める。
今は転生前と違って体型も同じくらいなせいか、少しよろめいてしまった。
近くでサソリが嫉妬心こもった舌打ちをする。
オレは少し笑った。
これが久遠の決意ならば、逆らうことはしない。
角都がいなくなってしまうその時まで、今までと同じように過ごすと。
「いきなりは危ないと何度も言ってるだろう」
「怒ってるイタチも萌えるから好き!」
「そういう問題ではない」
「いやーんイタチふわふわーいやされるう!」
服の隙間から覗いた久遠の顔。
瞳にのる雫に、少し驚く。やはり、寂しいものは寂しいのだろう。
久遠は強そうで弱い。
みんなにバレないように自然にそれを拭ってやれば、顔を上げた久遠が小さく笑った。
「やっぱりイタチ大好き」
「ああ、知ってるさ」
お前には笑顔しか似合わないことも。