「なんつーか・・・感服っスわ」


なんでか分からないけどその場から動けないオレに近づいてきた久遠さんは、そうですか?と表情を変えないまま言った。
まさか、うん、あんなこと言うとは思わなかった。


「自分であんなこと言える女子、オレ見たことない」
「それは褒めてるんですか?貶してるんですか?」
「・・・どっちもっス」
「・・・ありがとうございます」


呆れ半分、けど嬉しさ倍で、よく分からない感情が胸中に渦巻いている。
沈黙のまま、オレは近くの椅子を引いて座った。
久遠さんもそんなオレを咎めることはない。それどころかオレと同じように近くの椅子を引いて座った。


「私は、本当はとっくに君に心を奪われています」


そして、唐突に言った彼女の言葉にフリーズする。

え、今、彼女はなんて言った?


「一番最初、黄瀬君が私に告白をしてくれた時、本当は心の底から嬉しかったんです。だけど・・・なんでもできてしまうあなたが私に好意を持ってるなんて信じがたくて」


どこか遠くを見つめる久遠さんの瞳は、夕焼けでオレンジに染まっている。
オレは何もいう事なく、少し高鳴る胸をスルーして彼女の話に耳を傾けた。


「黄瀬君の想いが本気なら、突き放してもめげずに、その・・・アタックしてくれると思ったんです。まさか本当にしてくれるとは思いませんでしたけど」
「きつかったっスよー!嫌いとか言われて!オレ自慢じゃないけどフることはあってもフられることなんてなかったもん」
「黙ってくださいそういうところはわりと真面目に嫌いです」
「すいませんっス!!」


頭を思いっきり下げたら机と額がこんにちはしてしまった。
痛むそれを抑えて涙目で彼女を見上げる。心臓が止まった気がした。

これまでにないくらいに綺麗に笑う久遠さんが、初めて自分からオレに触れて、大丈夫ですか?と問う。


「試すようなことしてごめんなさい。黄瀬君、わたしもあなたが・・・きっと、あなたが私を好きになる前から好きでした」
「あ、え、は、はい・・・!ええ、どうしようオレめっちゃ嬉しいっス」


抱きしめてもいいっスか?と手を伸ばすと、ぱしんと払われるそれ。そして赤くなってる彼女がいた。
夕焼けのせいなんかじゃない。
まだ早いですと頬を染める久遠さんが、どうしようもなく愛しくて、払われた手だけど抱きしめてしまう。

身を堅くした彼女の髪の毛にキスを落とした。


「だっ・・・から、黄瀬君は嫌なんです・・・!!」
「いいじゃないスか晴れて恋人同士なんだし!久遠ちゃん」
「好きと伝えただけで恋人になるなんて誰も言ってません!」
「そんなの認めないっスよー!やっと叶ったのにもう離してやんない」
「・・・やっぱり嫌いです」


背中に回された手。
真っ赤な彼女の耳に笑いながら、オレは回した腕の力を強めた。

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