それはいつもどおり、のはずの朝だった。
いつものように白米をかきこんで、味噌汁と一緒に飲み込む。そこでオイラは斜め前で静かに箸を進める角都を盗み見た。

角都はついさっき、孤児院の先生に呼ばれて席を外していたのだ。
どうも嫌な予感というか、そんな感じの言い知れないなにかが胸中を渦巻いていた。帰って来た角都は何を言う事もなく、ただ黙々と箸を進めてはいる、が。
久遠に視線を移す。不安そうな顔を隠すことなくチラチラと角都に視線を配る久遠は、大方オイラと同じような、漠然とした何かモヤモヤするものを抱えているのだろう。

普段はうるさい飛段も、嘘のように大人しく角都の隣に座っている。
角都がため息をつきながら箸を置いた。


「・・・気になるか」


翡翠色の目が、他の誰でもなく久遠を捕える。
不安げに、けれども力強く頷いたそいつに角都はもう一度軽くため息をついて小さな久遠の手を引き席を立った。


「少し、席をはずす」


前世の癖なのか、リーダーであった長門にそう言い残し、角都と久遠の姿は廊下に消えた。


***


「なんか嫌な予感がすっぜ・・・」


遊戯室に行く気にもなれず、寝室で思い思いの体勢でいた。
重苦しい空気の中で呟いたのは、飛段。
普段のおちゃらけた空気など微塵も感じさせない様子で、腕に白ゼツを抱えている。
だよねぇと飛段の腕の中で呟く白ゼツ。

嫌な予感。

それを感じるのはオイラや飛段、久遠に留まらず、メンバー全員が感じているようだった。
黒ゼツを膝に乗せながら窓の外を眺める小南。
角都たちが消えた廊下を眺めている長門とオビト。
目を伏せ、腕を組み不機嫌そうな旦那。
壁にもたれ、どこか絡みにくい雰囲気のイタチ。そして鬼鮫。

オイラは持っていた積み木を床に放り投げ、後頭部で手を組んだ。
その時。

ドアが開く音がして、反射的に振り返る。
そこには、いつもと変わらない表情をした角都が立っていた。久遠はいない。
そのまま何も言わずにドアを閉め、適当な場所に胡坐をかいた角都に飛段が問う。


「おい、角都・・・久遠はどこだよ。つーかなんの話してたんだよ、先生に呼ばれてたその用件はなんだよ、」
「飛段、落ち着け」


冷静なオビトの声が、何故か重く室内に響く。
角都はしばらく黙って飛段を見た後、「だいたい予想はついてるんじゃないのか、」と淡々とした口調で言った。

胸がざわついた。


「オレの引き取り先がきまったようだ」


一瞬フリーズした思考回路で、なんとなく思う。
オイラは、オイラたちは、いつの間にこんなに互いを思い合う関係になったのだろう。
そして次に浮かぶのは、きっとどこかで泣いているであろう、久遠の姿。

神という存在がもしいるのであれば、この厳しい現実を、どうかいい方向に変えてはくれねぇだろうか。

もうあいつの泣いた顔は見たくねぇのに。

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