告白してフられてから数日。
久遠さんは、何事もなかったかのような平然とした顔で過ごしている。
一方オレはそんな彼女とは違い、気まずく感じ上手く対話できないでいた。
隣の席なのに超気まずい。話しかけれねぇ、話したいのに。ぐううう。
悶々と考え込んでいると、先生に指名されていたようで、何も聞いてなかったオレは慌てて立ち上がる。
え、コレどこの問題?え、こんなの習ってたっけ?待って待って意味不明。もう泣きてぇんだけど。
「45度です」
「・・・へ、あ、よ、45!度・・・っス」
噛みまくったオレに訝しげな顔をしてみせた先生だったが、答えはあっていたのだろう。
ぼーっとするなよと注意を受けたが、見逃してくれた。
ばっ、と隣の久遠さんを見る。
久遠さんも横目でオレを見ていて、なんだかむず痒い気分だ。
ありがとうと言いたいのに言えない。やっと出た声は、小さくて掠れていた。
「ぁ、りがと、っス・・・」
「いえ。・・・あの、黄瀬君」
話しかけられた!
思わず上ずってしまいそうな声を必死で抑えて、なんスかっ、とそれでも上ずってしまう声で聞き返す。
しばらくオレを横目で見ていた久遠さんは、何かをノートの切れ端に書いて手渡してくれた。
綺麗な、字だなあ。
《先日は言い過ぎました。ごめんなさい》
緩む頬が抑えきれない。
きっとオレは今、だらしのない顔をしていることだろう。だけどしょうがないじゃないか。
人を好きになるって、こんな感覚なんだ。
《大丈夫っス!オレ久遠さんの事、あきらめないから》
返事を書いた紙を見た久遠さんは、呆れた風なため息をついて、そして、
「・・・がんばってください」
他人事のように、微笑んだ。
・・・まだ道のりは長そうだ。