「久遠」


こたつに寝そべりながらテレビを見ていると、なにやら重そうな段ボールを抱えた大輝がリビングにやってきた。
なるほど、インターホンが鳴ったと思えば正体はそれだったのか(じゃんけんで負けた大輝が出ることになっていたのだ)。
送りつけてきたのは、あたしの祖父母だった。ああ、今年も。


「みかん」
「これで当分は買い物行かなくてもいいねえ」
「は?ふざけろ」
「冗談だってさすがに」


あークソ冷えた、といそいそと隣にもぐりこんでくる大輝。
でかいから一気にこたつの中は狭くなる。あ、ちょ、あたしのスペース取らないでよ。
ちょっと大輝!


「わり、オレでけぇからお前のスペースねぇわ」
「ふざけろ」
「冗談だって。んな怒んなよ」


子どもにするみたいに頭を叩いてくる大輝を押しのけ、みかんが五個くらい入りそうな皿を持ってくる。う、ちょっとこたつ出ただけで冷えるなあ。
段ボールの中からみかんを取り出して、皿に入れてこたつの上に置く。一気に冬っぽさが増した気がした。
なんとなくケータイで写真を撮って緑間に送りつけてみた。
"今年もうちにはみかんが届いたよ"っと。腰に巻きついてきた大輝の写真も一枚撮って、ついでにそれも送っておいた。


「なに写真撮ってんだよ」
「えー緑間に送ろうと思って」
「オレに送れ」
「大輝に送ってどーすんの、馬鹿なの?あ、馬鹿か」
「てめぇ絞めあげんぞ」
「ぐっ、も、う絞めてる!」


今さら嫉妬なんてする必要ないのになぁ、と思ったけど、ああでも桃井ちゃんと大輝が仲良くしてるの見るのはあたしでも嫉妬しちゃうかもなぁ。
でももう送信しちゃった、と思いケータイのディスプレイを眺める。
緑間からはすぐに返信が来た。"惚気るなら他をあたれ"・・・うん、どうせこんな返信が来ると思ったよ。

みかんをむいて一口食べた。
機嫌悪そうな顔をした大輝がノロノロと起き上がってあたしに体重をかけてくる。
もうちょっと体格差ってのを考えてくれないと困るっての。
みかんをひとつつまんで口元に運んでやれば、指ごと噛まれた。


「いたいんだけど」
「・・・うま」
「シカト?ねえシカト?」


最後まであたしをシカトした大輝が、新しいみかんをむき始める。
半分に割ってそれを一口で食べるものだから、もっと味わって食べなよ・・・と呆れる他なかった。

体がでかければ、口もでかい。
みかんをかじれば、独特の甘みと酸味が口内に広がって、指先は少し黄色くなっていた。

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