どんな女の子にも気軽に運命だとか囁く森山先輩が、果たして妬くのかどうか。
黄瀬に持ちかけられた話に、興味を持ってしまった。
かくいう私は森山先輩の彼女である。
そんなにヤキモチ妬きじゃないほうだけど、普段の森山先輩の女の子好きにはさすがに思うところがある。
それがあの人のキャラだと分かっていてもだ。
そこで、私は黄瀬の話に乗ることにした。
内容は簡単なもの。普段から仲良しな私と黄瀬が、もっと近づいてみればいいのだ。
・・・これくらい、許されるよね。
なんだか罪悪感を感じるけど、先輩は普段からなんの罪悪感もなく女の子と接してるんだと思えば無性にイライラした。
「はい、タオル」
「さんきゅっス久遠っち!」
「久遠ちゃんオレにもー」
べたっと寄りかかってくる森山先輩を押しのけて、そのまま黄瀬と談笑してみる。
なんだか後ろからビシビシ視線を感じたけど、無視だ無視!
笠松先輩と小堀先輩が私達を見て首を傾げている。
察してください、私は日ごろのお返しをしようと試みてるんです!
話をしていた黄瀬の顔色が段々と悪くなってきた。
どうしたの?と問いかけようとした時、何か強い力で後ろに引っ張られる。
普段からは考えられないほどに怖い顔をした森山先輩が、それでも優しい力で私の肩を押し、体育館の壁に押し付けた。
え、待ってなにこれどういう状況?
「なに考えてるの、久遠ちゃん」
「なにって、え・・・」
「黄瀬といちゃいちゃしてオレに見せつけて・・・妬かないとでも思った?」
迫ってくる先輩の顔に、息を呑む。
黙ってればイケメンなのだ。こんな綺麗な顔が目の前にあって、赤面しないほうがおかしい。
「だ・・・って、先輩だっていっつも女の子と話してるじゃないですか・・・!」
「あれは表面上の付き合い!久遠ちゃんは違うだろ」
「・・・私だって嫉妬しますもん」
「・・・、もー」
かわいい、と呟いた森山先輩の腕に閉じ込められる。
よそでやれ!という笠松先輩の怒号が聞こえたけど、今はもう少しだけ、
もう少しだけ、許してください。