「相手とほどよいかんけいをむすぶには、つね日ごろから"ありがとう"という言葉をつかうこと・・・ふむ・・・」


なにやらぶつぶつと呟いているオビトに、普段から散々からかいにあっている久遠がこっそりと近づいていく。
驚かそうとしているのか、その後姿を見ていた長門と小南は顔を見合わせて可笑しそうに笑った。
しかしオビトも元忍であり、最後の黒幕だ。
転生したとはいえ、忍の感覚がまだ抜けたわけではない。
そう簡単に背後を取られるわけがないのだ。

いとも簡単に久遠の気配に気づいたオビトだったが、逆に驚かしてやろうと体を反転させようとし、・・・やめた。
この本を読んだあとに真っ向から逆らうようなことをするのは気が引けたのだ。


「わっ!!」
「おどろいたな、久遠か」
「まったくおどろいてない!?」
「あれ?おかしいな・・・なぜわかった」
「やっぱりおどろいてないー!くそう!」


悔しげに地団駄を踏む久遠を見上げながら、オビトはふと考えた。

もしこいつがトリップしてこなければ、今このときにオビトはいない。
考えると、とても尊くて儚い命なのだ。

オビトはもう一度久遠を見た。
ふくれっ面の久遠は、自分を見つめる黒の瞳に首を傾げる。

なんだか、愛しく思えてきて、オビトは思わず笑った。


「久遠、ありがとう」
「・・・・・・・・・はえ?」


満足そうに笑ったオビトに、鳥肌が立ってしまったのは、言うまでもない。

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