「うたかたさま!」
大きな目をこれでもかというくらいにキラキラさせて、今日もあいつはオレの所にやってくる。
応えるようにシャボン玉をふけば、その顔は嬉しそうに綻んだ。
「見てくださいうたかたさま!今日はたくさんお花をつんできたんです!」
きれいでしょう?えらいでしょう?
と、小首をかしげる久遠はさながら可愛くて、愛しくて、思わずオレまで破顔する。
どこまで取りにいったんだ?と聞いたものに返ってきたのは、随分遠くの場所の名前だった。
どうりで、見ない花だと思ったんだ。
柔らかい頬を少し強めにつねる。
久遠は不思議そうにオレを見上げた。
「うたかたひゃま?」
「・・・あまり遠くへ行くなよ」
心配するだろ、と言ったオレの表情はどんなものだったのか、久遠はいささか心配げな顔でオレの頬を撫でた。
「大丈夫です!もしなにかあっても、きっとうたかたさまが助けにきてくださるから!」
「保証なんかどこにもねぇぞ」
「でも、だって、そうですよね?」
首をかしげるこいつに頷く代わりに、オレは優しく髪の毛を撫でて笑って見せた。