ゆるり、と、サスケの細い手が久遠の髪の毛を巻きつけ、するりと梳いていく。
掛け布団の中におさめられた身体には、いくつもの傷跡があるのをサスケは知っている。
重吾や香燐、水月と同じように、彼女もまた、大蛇丸の実験体の一人だった。
浅く、早い呼吸を繰り返し、時々苦しそうに目を寄せる久遠が見るのは、きっと恐れを抱かせるような怖い夢だ。
丁重に扱われる重吾達とは違い、久遠はそれらの細胞をかわりがわりに身体に埋め込まれてきた。
適応しなくても、耐えられる身体を持ってしまったが故に、繰り返し繰り返し。


"――――――――っ!!!"

彼女の声にならない悲鳴を聞いたあの時。
サスケは久々に胸に痛みを感じた。人を思って胸を痛めたのは、こちらに来てから初めてのことだった。


「・・・久遠」


頬を撫で、切なげに顔をゆがめるサスケ。
サスケと久遠の出会いは漫画によくあるような運命的なものではない。
ただ、本当に、偶然に、脱出を試みた久遠を見つけてしまったのがサスケだ。
痛々しく、思わず目を逸らしてしまいそうな傷の多さに、サスケは顔をしかめた。
恐怖に染まる久遠の頬を無意識に撫で、気を失った彼女をそのまましばらく、意味も無く抱いていたのだ。


"あの子は立派な実験体よ。何度繰り返し使用しても痛みを伴うだけで死にはしない"


自分にもっと力があれば、今すぐにでも大蛇丸を殺していた。
刀に手を掛けるサスケに気づいているのかそうでないのか、大蛇丸の口元から笑みが消えることはなかった。

毎日、久遠が眠る部屋に足を運んでいる。
無表情に自身の手を見つめ、サスケが来ても反応を見せない彼女の部屋に、毎日。
そして毎日、言葉にするのだ。


「好きだ」


そして夢、・・・否、近いうちそれは現実となる。
大蛇丸を殺し、奴の力を手に入れ、久遠を外の世界に連れ出すのだ。

か細い手を握り、もう一度好きだと呟く。
久遠は薄く目を開けて、かすかに笑った・・・気がした。

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