「オレのことが嫌いになったのか?」


いつも涼しい顔をしているイタチが少し泣きそうに眉を寄せ、私の服を掴んだ。
突然に見せられた彼の弱々しい姿に、驚き頭がフリーズする。

私が、イタチを、嫌いに?

そんなこと、あるはずがないのに、と何も言わずに彼の瞳を見つめれば、弱い力で引き寄せられた。
そのまま肩口に顔を額を当てられ、漆黒の長い髪が私の頬をくすぐる。
何がなんだかわからない私は、困惑したまま彼の背中に手を回した。


「・・・久遠、だけは・・・失いたくない」
「私はここにいるよ?イタチ」


そもそも、なんで嫌いになるなんてことが・・・?
首をかしげると、イタチはさらに強い力で私を抱きしめた。

変な夢でも見たのだろうか。
酷くおびえているような彼の姿からは、普段の余裕さは感じ取れない。


「大丈夫だよ、イタチ。だいじょうぶ」
「・・・っどこにも、行くな」
「行かないよ」


行くわけないでしょう?

そう言えば、イタチは安心したのか私を抱く力を緩めた。
かつての同胞をその手にかけた冷酷無慈悲なうちはイタチも、所詮ただの人間なのだ。

背中に回る弱々しい手が、肩口に埋まる彼の顔が、それを物語る。
かの悲しみに押しつぶされたとき、イタチが見るものは一体なんなのだろう。

そしてそんな彼の隣に、一生一緒に居たいと願った。

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