「っんのクソ久遠・・・!」


あまりにも怒気が含まれた声音に、オイラは思わず肩を揺らしてしまった。
目の前に立っている久遠は、あ、やべやっちまった、みたいな顔をして口元を引き攣らせた。

まあ、さっきのはいくら変態の肩書き(嬉しくねぇ肩書きだが)があったと言えど、やりすぎだ。
なんせ、旦那の・・・アレを、触ろうとしたのだから。


「じょ、冗談じゃないですか嫌だなぁってサソリさん手に持ってるもの一体・・・?」
「・・・ああ?なにか分からねぇわけじゃねえだろ・・・?」
「毒針ですかそうですよね冗談と言ってくださぎゃああ!デイダラちゃんへるぷみっ」
「・・・知らねーよ、うん。今回のはお前が悪ぃ」


本気(と、言っても久遠が避けれる程度の速さだが)で毒針を刺しに行く旦那と、必死で避ける久遠。
良い機会だ、これを機にちょっと反省すればいいんだ、うん。

ぎゃ、とかうげっ、とか非情に女らしくない悲鳴を上げながら、旦那から逃れるべく久遠は自分の部屋に駆けて行った。
普段ならそこで呆れたようにため息をつくだけの旦那も、さすがに今回は逆鱗に触れたのか、しつこく追いかけていった。

・・・久遠ならまだしも、旦那はもうとうにじじいなのに、よく鬼ごっことかやってられんな。


***


久遠の首筋ぎりぎりに毒針を押し当て、オレは鼻で笑った。
対する久遠も、こんな状況にありながら、にやにやと笑っている。


「サソリさんの手でイけるなんて幸せです・・・!」
「おい字が違ぇだろうが。お前はこれから逝くんだよ。あの世にな」
「またまたぁ!それって媚薬ですよね!それぶっ刺してあたしはこれから犯されるんですよね!?」
「キモイ鼻息荒すぎてここまでかかってくんだよ死ね」
「・・・いいんです。サソリさんにならなにされたって、」
「マジで一回死ねよ。てゆーか人の話聞け」


冗談です、と久遠は笑った。
当たり前だ、と返せば、こいつはまた嬉しそうに笑った。

なにが嬉しいのか、甚だ疑問だが。
首筋から毒針を離した途端、勢い良く抱きついてくる。
犬みてぇな久遠に慣れるのは、そう時間はかからなかった。


「優しいサソリさんが大好きです!」
「んなこと言いながら触ろうとすんじゃねーよ」


また下に手を伸ばそうとした久遠の手を思い切りつねり、だがオレはこいつを突き放すことはなく好きにさしておく。

ああ、慣れとは怖いものだ。

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