「デートしようデート!」


爛々と目を輝かせるこいつを、誰が断れようか。
ていうかこの孤児院内で、どうやってデートするのか。
疑問しかないが、常人よりも少し大きくて丸い久遠のチワワのような瞳に押し負けて、オレは頷くより他なかった。
途端、嬉しそうに笑う久遠。傍で小南が微笑ましげな笑みを浮かべた。


「じゃ、小南、長門かりるね!」
「ええ。がんばってね長門」
「・・・・・・・ああ」


小南の言う"がんばって"が、何か別の意味合いも含んだように聞こえ、少し気恥ずかしい。
彼女の膝の上に乗っていた白ゼツが、にや、口角を上げたのが見えた。


***


「ちょっとまて久遠、この園内でどこに行くんだ?まさか、がいしゅつきょかなく外にでるのか?」
「まさかー!そんなわざわざおこられるようなこと・・・や、それもいいかも」
「かんがえなしか。そしてやめろ」


んー、どうしようね?

こてんと首をかしげる久遠は、それはもう愛らしい。
母性愛というのか、心臓あたりがきゅっと縮まって、思わず笑みを浮かべてしまいそうなくらいには愛らしい。小南にこのことを話せば、呆れたように"親ばかならぬ久遠ばかね"と笑われたのはつい最近のことだ。

仕方ないだろう、久遠が可愛いのが悪いんだ。


「長門はどっかいきたいとこある?」
「・・・そんなことを言われても、園内のことはもうほとんどはあくしてるしな・・・」
「じゃああたしのベッドは!?」
「っ!?ばっ、ばかか!!」
「赤面長門ごちそうさまですあいかわらずかわいいいいいい!」


ぎゅうぎゅうと抱きついてくる久遠からは、園内共通で使っているシャンプーの香りがした。

それより、オレのこの煩い心臓が久遠に伝わったらどうしよう。
慌てて引き剥がそうとするも、所詮子どもの体。
成長すればまた変わるかもしれないが、今のままでは力にそう差異はない。

転生して、唯一の悩み事だ。


「はなっ、はなれろ久遠・・・!」
「長門はあたしがきらいなの?」
「そんなわけない!!」
「じゃ、いいじゃーんすりすり」
「はっ(のせられたっ)・・・!」


・・・もういい、こうなったらどうにでもなれ、だ。

まだ小さな手を背中に回し、倍返しのつもりで抱きしめる。
きゃー!と楽しそうな悲鳴を上げる久遠に、オレも嬉しくなって笑った。

子どものようにじゃれて、疲れて、それでもまだ抱きつき合って、そんなオレ達を睨むように見ていた影が四つあったことは・・・気づかないふりをしておこう。

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