彼はなんの前触れもなく、突然に私の部屋に訪れる。
周期は様々だ。一ヶ月来なかったり、連続で来たり。
そのたびに私は夏ならばオレンジジュースを、冬ならばココアを差し出す。
赤司はそれに口をつけない日もあれば、一気に飲み干したり、間を置いて少しだけ飲んだりすることもある。

私は赤司の幼馴染みというものをやっている。
通っている学校は同じだけれど、校内で話すことは全くない。

一緒にいるところを見られると、久遠に被害が及ぶかもしれない。

自意識過剰とかそんなものではなく、事実を言う赤司の言葉に、小さく頷いたのは私だ。
赤司含むバスケ部は、それはもう大人気だ。女の嫉妬ほど怖いものはないからな、と呟く赤司が寂しそうだったから、私だって少しくらい我慢できる。
幼馴染みとは、長い間付き合ってきた故、傍にいなくなると少しの寂しさを感じるものなのだ。

差し出したココアを半分くらいまで飲んだ赤司は、無言で私に抱きついた。
いや、体格差から、抱きしめた、のほうがしっくりくるかもしれない。

質のいい赤司の髪の毛が、私の頬に当たって少しくすぐったい。
無言で彼の背中を小さく叩けば、抱きしめる力が強まった。

これは彼の甘え。だと、私は思っている。
そして、赤司だって人間なのだ、と痛感する。
さらにこの姿を知っているのは私だけだという優越感が胸中を支配して、口元は弧を描くのだ。


「赤司」
「・・・なんだ」
「赤司」
「その呼び方はやめろ、久遠」
「・・・征十郎」


どんなことがあっても、私は征十郎の味方だよ。

言葉には出さない。
未来が視える彼には、それはわかっているのだろうか。

ただ、私を抱きしめるぬくもりは、いつまでも変わらないことを願う。

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -