マネージャーは、部員を支えるのが仕事であり、決して色恋沙汰を動機に行う役職ではない。
一際目立つカラフルな頭に頬を染めるあたし以外のマネージャーを見て、あたしは今日も深いため息をひとつ。
桃井さんと違って特殊な才能のないあたし達マネージャーが任される仕事は、雑用ばかりで面倒くさいのも分かるけど、手が動かせないほどに彼らを見つめてあーだこーだ言い合うのなら、ただの一般ギャラリーにでもなればいいのに。
・・・なあんて悪態は心の中に秘めながら、みんなが働かない分まで水を入れ粉を入れ、ドリンクを作るあたし。
部員もマネージャーも多いこのバスケ部では、人一倍頑張ってる(つもり)のあたしの努力なんて見えない。
故に、作り終えたドリンクを好みの男性に渡しに行く彼女達でさえ、彼らにとっては"良いマネージャー"なんだろう。

そこらのマネと一緒にすんなし。
と、いうのがあたしの本音だ。

別に作ったドリンクを彼女達に奪われるのはどうってことない。
ただ、心から彼らを支えたいと思ってるあたしのその気持ちさえ、彼女達と同じだと思われたくないだけだ。
部内の空気が悪くなるようなことはしたくないから、言わないけど。

そしてあたしは今日もまた、真面目にドリンクの入れ物を洗う。

カタン、と物音がした。
誰かマネージャーが来てくれたのかな、と若干期待しつつ、けど振り向かずに空になった入れ物を洗い続ける。
今まで好き勝手してきた彼女達を、許すなんて気は微塵もない。


「・・・手は、痛くないか?」
「!?」


低い声。
反射的に振り返った先にいたのは、赤の人。

思わず息を呑んだ。
赤司征十郎。我が部の主将である。
ハードな練習を終えた彼の額には汗が光っていて、なんだかとても眩しく思えた。


「・・・今のこの部のマネージャーの現状は、俺から見ても許し難い。君はいつも真面目に取り組んでくれているが・・・無理をするのはいただけないな。それに、言いたいことがあるのなら思い切り他のマネージャーを罵倒すればいい。それすらしないのは、ただの臆病者だ」


温厚な彼の口から飛び出た叱咤の言葉に、あたしは返す言葉もなく立ちすくんだ。
歩み寄る彼の白い手が、出っ放しだった水をとめる。

・・・近い。

何故か暴れる心臓に、あたしは服のすそを握った。


「だが、」


頭に優しいぬくもり。
思わず目を見開いて目の前の彼を見つめれば、赤司君は見たことのない優しい笑顔を浮かべていた。


「君には本当に感謝している。いつもありがとう」
「・・・っ!」


誰も、あたしの頑張りなんて見つけてくれないと思ってた。
だからこそ本当に嬉しくて、つい涙が出てしまいそうになる。


「・・・あたしこそ、見つけてくれてありがとう」

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