「おいクオンこっち来い」
膝を立てて座る彼を振り向く。
手のひらで床を叩き、ここに座れと命令していた。
そう、リヴァイ兵長の、股の間。
え、と思わず固まれば、気の長くない兵長はもともと険しい顔つきをもっと険しくして、早く来いと低い声を出した。
反射的に兵長の言うとおりに彼の股の間に赴く。
正面から向き合うように座れば、「・・・チッ、こっち向くのか」となんとも理不尽な舌打ちをくらったが気にしない。
一体私はなにをされるというのか。
一応いつでも逃げれる体勢をとっておく。
人類最強の男にどこまで私の体術が通用するかなんて考えるまでもないけど。
物思いにふけっていると、いきなり抱き寄せられる体。
え、と呟きが漏れる。兵長の髪の毛が首筋にあたって、少しくすぐったかった。
え、え、え、え?
「・・・いつも世話になってる」
「・・・え、へいちょ、ええ?」
「うるせぇ黙れ。これくらいでお前の傷が癒えるなんて思っちゃいねぇよ」
「・・・あの、」
人類最強の兵長は、そんな通り名なんて嘘じゃないかと思うくらいに優しく私を包んで。
思わず揺れる涙腺に、私は唇を噛み締めた。
「少しくらい、心を休める日があったっていいじゃねぇか。なあ?」
「・・・そうですね」
そしてその大きな背中に、私はそっと手を回す。