座学の時間、ジャンとクオンは毎回お互いの隣に座る。
クオンの右側にジャン、そしてジャンの左側にクオン。

何か示し合わせているわけではない。
ただし偶然というわけでもない。
何かにひかれるように互いが互いの隣に座るのだ。

クオンとジャンは同期の中でも一際仲の良い二人だった。
恋人じゃないかという説もあるが、そんな話題を二人に持ちかけても恥ずかしがるどころか不思議そうな顔をされるのだ。
ゆえに、恋人かそうでないかは確信が持てない。
エレンと喧嘩仲間のジャンは、普段はあんなにも単純な奴だというのに、クオンが関わるとよく分からない奴になる。
大人になる、というほうが正しいのだろうか。

とにかくクオンとジャンが一緒にいると、互いがとても落ち着いた雰囲気を醸し出すのだ。
そんな二人は今日も、隣の席に座っている。

クオンがジャンの袖を軽く引っ張った。
少し眉を寄せ、なんだと口パクで示すジャン。
紙の切れ端に伝えたい言葉を文字で並べていくクオンの指は、とても綺麗だと思った。


"さっきね、アニに、付き合ってないならなんで一緒にいるの?って聞かれたんだけど"


恥ずかしいという感情はなかった。
だけど、アニの言うことももっともで、ジャンは形容し難い思いに襲われる。
自分を見つめる瞳はいつも通りで、これ以上を望むような気はなさそうだ。


"意味なんてねぇだろ"
"だよね。でも周りはみんな不思議そうにしてる"
"お前はどうしたいんだよ?"
"どうって、別にどうも"
"ならいいじゃねぇか"


座学の時間が終わった。
ざわついてきた周りに合わせて、二人も席を立つ。

よう、お二人さんはいい感じかぁ?

どこかで茶化すような声が聞こえた。
クオンとジャンは顔を合わせ、少し笑う。


「・・・恋人とか、関係なく・・・好きならそれでいいんじゃねぇ?」
「うん、もう否定するのも面倒だし」
「お前はオレが好きなんだろ?」
「好きだよ。ジャンは?」
「・・・聞くなよ」
「ねぇ、ジャンはー?」


頬を染める二人を見たことのある者はいなかった。
だがジャンは照れくさそうに頬をかき、そっぽを向きながら確かに言った。


「・・・好きだよ、バーカ」

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