わたしはジャンが嫌いだ。
そしてジャンもきっと、わたしの事が嫌いだ。
そう言い切れる根拠は、れっきとしてある。
わたしとジャンは目が合えばいつも口喧嘩ばっかり。それはジャンとエレンの比ではない。むしろそれ以上だと言ってもいいと思う。

もう一度言おう。
わたしはジャンが嫌いだ。大っ嫌いだ。


「でも、そうは見えないよ?」
「はあー?」


天使クリスタにつぶらな瞳を向けられ、わたしはそれを眩しく思いながらも顔をしかめた。
クリスタの傍にはいつものとおりユミルがいて、同じように頷いている。
わたしはますます顔をしかめた。
そうは見えない?なら、どう見えるというのだ。


「少なくとも、ジャンがお前の事を嫌ってるとは思わねぇな」
「それこそどんな根拠があってそんなこと・・・有り得ないでしょ」
「そんな否定的にならないで、クオン。きっとそのうち分かるよ」


なにが分かるというのだろう。
わたしは不可解に思いながらも、これ以上この話題を話すのは面倒で何も言わないことにした。


***


目が合った。
ジャンはすばやくわたしの全身を見て、そして欠点を見つけて口を開く。


「てめー、またスープ少なくしてもらってんのかよ」
「は、なに?悪い?」
「悪いもなにも、そんなだから体力つかねーんだよ」
「別にわたしの勝手じゃん。いちいち首突っ込まないでくれる?」


また始まった、と周りにいるみんなは苦笑い。
仕方ないじゃん、こいつがつっかかってくるんだから。

クリスタとユミルと目が合った。
二人は面白そうに顔を見合わせて、何故かピースしてくる。心の底から意味が分からない。


「大体なぁ、もとから細い体つきしてんだから、もっと食えクソアマが」
「クソアマ言うなクソ男。内地志願者は他人に構わず黙って成績あげてりゃいーでしょうが」
「んなもん関係ねぇだろうがボケ!」
「関係ないなら口挟まないでよバカ!」
「しかたねーだろ気になんだよわかれよ!!」
「何をわかれってんのわたしのことはほっとけばいーでしょ!!」
「ほっとけねーから口挟んでんだろ!!!」
「ジャンには関係ないでしょ!!!わたしの事嫌いなくせに!!」
「嫌いなわけねーだろむしろ好きなんだよ!!!!」
「わたしだって好きでこんな言い合いしてな、・・・え?」
「・・・あ」


真っ赤に染まったジャンの顔。
それに比例してわたしの頬に集まっていく熱。

ばっ、とクリスタとユミルを振り返る。
だから言ったじゃん、と言いたげな顔で、二人はまたピースサインを送ってきた。

してやられた。

真っ赤な顔のまま睨んでくるジャンに、もう嫌気は感じなかった。

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