「傀儡使いが操られちゃおしまいじゃん!」
外でカンクロウの声がする。
オレ自身が作った傀儡に閉じ込められた際、何故か一緒になって飛び込んできた久遠が涙目でオレを見上げるのが分かった。
その額に当てられるのは、砂のマークの額当てなんかじゃねぇ。
どの国もひとつになって戦ってるこの戦場での、特殊な額当て。
オレの知らない久遠。
それでも確かに、オレの愛した久遠で。
魂の縛りが解けそうになっている今、走馬灯のように今までのことが甦ってくる。
「サソリさん」
「・・・・・・・あ?」
「サソリさんは、変わらないね」
戦闘スタイルも、性格も、癖も。
その声は震えていた。
こいつの泣き顔なんて何度も見てきた。
嬉しそうな顔も、楽しそうな顔も、拗ねた顔も、幸せそうな、顔も。
それもこれで、本当に、最期だ。
「私もいっしょに行くよ」
涙を流しながら、お前は笑った。
「もう、サソリさんを独りにしないよ」
悲しそうに、けど、いたずらっこみたいな顔で。
「生まれ変わっても、何度でも、わたしは貴方を好きになるよ」
「久遠」
「愛してるよ、あいしてる」
「、久遠」
ずっと孤独だった。
それでも平気なはずだった。
オレはそんなヤワじゃねぇ。
だけど。
目の前にいる小さな久遠の身体を抱きしめる。
あたたかかった。確かな幸せを感じた。
オレはもうひとりじゃねぇ。
だってお前がいるだろ?なぁ、久遠。
「・・・待つのは、嫌いだ」
「うん」
「でもお前は、まだ、来るな」
「・・・うん」
「・・・待ってる」
身体が浮く感覚がした。
最期に、涙を流しながら笑みをこぼす久遠の目尻にキスをする。
「オレだってお前をずっと、愛してるぜ」