見覚えのある大通りだけど、一緒に来ていた人がいないだけでこうも怖く感じてしまうものなのだろうか。
少し肌寒いこの季節。意味なく手をこすり合わせてあたりを見渡す今の私の顔は、きっと泣きそうに歪んでいるのだろう。だって実際泣きそうだもん。

ほんと、どこ行っちゃったのバカ幸ぃ・・・!
ずっと隣にいると思って話しかけちゃったじゃん恥ずかしい・・・!!

笠松幸男という男は、実にウブな男子高生だ。
手を繋ぐ、キス、それ以上・・・まず目を合わせることすら最初は困難だった。
女子が苦手と言っていた幸男を思い出す。
それでも好きになったものはしょうがなくて、猛アタックの末やっと恋人というポジションを手に入れた。本当に苦労した。

女子が苦手な上に鈍感とかマジでふざけてんの、と一時は逆ギレしそうになったくらいだ。

部活が忙しい彼とのデートも片手で数えられる程度。
今日はそのうちの一回となったはずなのに、手を繋ぐことすら恥ずかしがる彼とはぐれてしまうハメになるなんて。

もう色んな意味で泣きそう。
ケータイの電源は何故か切れてるし(これだからスマホは便利と見せかけて不便なんだから)、幸男は一向に見つかんないし、やば、泣く―――、


「・・・ぅ、」
「久遠!!!」
「っう!?」


どかんっ、と背中に何かがぶつかった。
こんなことしてくる人なんて私の知り合いを思い浮かべても誰だかわからない、けど、声は確かに彼のもので。

困惑する頭の中で必死に考えて、ゆっくりと振り返ったら息を荒くした幸男が私の肩を掴んでいた。


「ゆ、」
「っんの馬鹿!!」
「ぅわっ!?」


ぎゅうぎゅう力強い腕が私の背中に回っていて、幸男の頭が私の顔の横にあって、今の状況を理解するまでに多少の時間を要した。

私、抱きしめられて・・・る?

理解した途端、顔に集まる熱。
あ、う、と言葉になってない声を発していれば、幸男は心配そうに私の顔を覗きこみながら怪我は?とかナンパされてねーだろうな?とか聞いてくる。


「駄目だ久遠は危なっかしすぎる。オレの腕持っとけ!」
「は、はい」
「絶対ぇ離れんじゃねーぞ」
「っうん!」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・、幸男?」
「や、やっぱちょっとだけ距離あけてくんねーか・・・?」


ひどく心配していた彼の思考が冷静になる頃。
徐々に赤みを帯びてきた幸男の顔に、私は小さく笑った。


「やーだねっ」


そしてあいていた距離を埋めるかのように、彼の腕にきつく抱きつくのだった。

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