どんなに貴方が最強と呼ばれようと。
貴方が今まで約束を破ったことがなかろうと。
「・・・行かないでください、」
自由の翼を背に、今回もリヴァイさんは刃を振るうのだろう。
いくら経験を重ねても滲む視界に、変わらない表情の彼がこちらを振り返るのが分かった。
その顔を二度と見れなくなるかもしれないのが、行ったまま帰ってこなくなってしまうかもしれないのが、とてつもなく、恐いのだ。
今ならまだ、手を伸ばしたところに彼はいる。
行かないでと言いながらも、手を伸ばすことすらできない私はただの臆病者だ。
リヴァイさんは無言のまま私の傍まで歩み寄った。
「オレがなんと呼ばれているか知ってるな?」
「・・・人類最強、です」
「オレが今まで約束を破ったことがあるか?」
「ないです・・・、」
「なら、待てるな?」
「・・・・・・・・、」
伏せた視線のさきには、小さく震える自身の拳と、リヴァイさんの大きな足。
違うんです、リヴァイさん。
信じてないわけじゃないんです。
ただ、恐いだけなんです。貴方がいない生活を考えるだけで、私はたまらなく恐くなる。
大きなぬくもりが私の頭の上に乗った。
そのまま何度も何度も髪の毛を梳かれ、優しく叩かれ、とうとう私の目から透明な雫がぱたぱたとこぼれ落ちる。
「お前が待っていてくれるのなら、オレは必ず戻ってくる」
「・・・っぃ・・・!」
「だから、大人しく帰りを待ってろ。命令だ」
「っはい・・・!」
リヴァイさんの手は、いつでも温かいのだ。
それが冷たくなることはないのだ。きっと、だって、信じてます、リヴァイさん。
「こういう時はなんて言うか知ってるな?」
「・・・・はい」
いってらっしゃい、リヴァイさん。