「痛くねぇのかよ」
言いながら、彼の膝の上に鎮座する私の体に後ろから腕を回すサソリは、存外私に甘いと思う。
痛いくないのかって、そんなの愚問だ。生身の体を失ったサソリの上に乗るのは少しくらい痛いに決まっている。
だけど、そんなの今さらなことだ。
何も答えずに回された腕に顔を埋める。生身じゃなくても、サソリの匂いがした。
「お前、オレのこと大好きだな」
「なによ今さら」
「・・・ふん」
照れているのか少し間をあけて鼻で笑ったサソリ。
そんな彼が愛おしくて私も少し笑ってしまう。小さく肩が揺れた。サソリはそんな私の頼りないであろう小さな肩に、こつんと額を乗せる。
少し癖のある髪の毛が頬にあたってくすぐったい。また笑みがこぼれた。
「サソリは?どうなの?」
「あ?・・・なにがだ」
「言われなくても分かってるくせに」
「言わなくても分かってんだろ」
「まあ」
「チッ、」
私の耳にサソリの吐息がかかる。
「好きだばーか」
甘くて低い声で、彼は愛の言葉を吐き捨てた。
それはとても優しく、くすぐったい響きだった。