「クオン!オレと結婚してくれ!」


クオンの肩を掴んだジャンの顔は真剣そのものだった。
みなの目が集まる公衆の場、呆けたままのクオンの顔が一気に真っ赤に染まる。
あ、だとか、う、だとか言葉にならない声を出し、今にも沸騰しそうな勢いだ。

その一部始終を見ていたマルコ達同期は思った。

ぶっとびすぎだこの野郎!!!


「いきなり何を言い出すんだ、あいつは?」


ミカサに耳打ちするエレン。その隣でアルミンは苦笑していた。知らない、とミカサが視界に二人を入れたまま言葉を濁す。
ライナーとベルトルトは二人して顔を見合わせ、アニはそ知らぬふりでパンをかじり、コニーとサシャは目を輝かせて見守っている。

固まったままのクオンに、ジャンはさらに言い寄った。


「お前の事、愛してるんだ!」
「だからぶっとびすぎだって、ジャン・・・」
「絶対ぇ幸せにする!!」
「聞いてないね」


マルコの制止も聞く耳持たず、ジャンの猛アタックは止まらない。
依然肩を掴まれたままのクオンは、羞恥のあまりその場に座り込んだ。

ヒュウ、と誰かが口笛を鳴らす。たぶんコニーかサシャあたりだろう。
黙々とパンを食べていたアニも、目ではしっかりとクオン達の様子を捉えていた。

ジャンのクオンに対する好意は周知のことであった。
ただ、彼女が超がつくほどの鈍感だっただけなのだ。それはもう、ジャンの好意は幾度となくスルーされてきた。

我慢が限界に達したのかな・・・

マルコは遠い目をして、それからまた視線を二人に戻した。


「・・・クオン?どうなんだよ、」
「あの、ジャン」
「っ、おう」
「恋人からじゃ、駄目ですか」


トマトのような顔をしたクオンは、小さな声でそう言った。
ジャンの顔が喜びに染まっていく。

マルコは小さく、おめでとうと呟いた。


(でも、みんなの前で言われるのは恥ずかしかったなぁ)
(しょうがねーだろ、だってお前気づかねーし)

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