最近、ジャンといることが増えてきたなぁと唐突に思った。
過酷な訓練を終えた夕飯時の今、隣にジャンがいる。ふと思ったのだ。
そういえば今日も立体機動の訓練だったけど、近くにはジャンが必ずいたような・・・
クオンはスープをすくって口元に運びながら、隣にいる彼をチラリと盗み見た。
バッチリと目が合ってしまった。どうしたらいいのかわからないうちに、ぽたりとこぼれたスープ。ため息をつきながら汚ねぇなとナプキンで拭ってくれているジャンを、また盗み見る。
そういえば最近、ジャンは私の身の回りのことをしてくれる気がするなぁ・・・
「・・・なに見てんだよ」
気づけばジャンを凝視してしまっていたらしく、少し顔を赤くしながら睨んできた彼に慌ててなんでもないと言い返す。
「・・・早く食えよ」
頷けば、頭を二回ほど叩かれた。
加減してるつもりなのかもしれないが、少しだけ痛かった。
以前アニが言ってたような気がする。
ジャンは好きな子には尽くしたいタイプだと。曖昧に笑っておいたが、何故かため息をつかれた覚えがある。
鈍感だね。
隣に立っていたベルトルトが苦笑したのを思い出した。
夕飯を食べ終えたジャンからの視線が気になる。
あんまり見ないでほしいなぁと少しぬるくなったスープを飲みながら思った。
「そんなぼーっとしてたら、またこぼすぞ」
そんな事、だってジャンが見てくるから集中できない。
少しふくれっ面でクオンは言った。
ジャンは自分がクオンを見てしまっていることに気づいていなかったのか、慌てて悪ぃと謝った。
その顔はやはり赤い。
向かいに座っていたアニが、青春ならよそでやってほしいねと吐き捨てた。
クオンはなんのことか分からず、また曖昧に笑っておく。ため息が返ってきた。
「・・・ジャンはなんで、いつも私の近くにいるの?」
顔の火照りが冷めた頃にそんな事を聞かれたジャンは、またぶわあぁっと赤くなった。
熱でもあるのかなぁと心配になってしまうクオン。
ジャンの額に手を伸ばそうとするが、その手を逆に掴まれ驚いてしまう。
真っ赤になったジャンが、なかば叫ぶように言った。
「お前がっ、その・・・!・・・っ、す、好きなんだよ!気づけ馬鹿!!」
「・・・・・・・・・・・天使がいる・・・!」
その日からジャンはクオンにとっての天使に昇格したとか。
天使という言葉に納得しているわけではないが、満更でもなさそうなジャンがいることはまた別の話だ。