ドルオタなのは分かってた。
分かってて、それでも好きだから交際を申し込んだ。結果はオーケー。
・・・な・の・に!!!


「彼女ほったらかして録画してた番組観るってどうなんですかぁ!!」
「うるせぇ轢くぞ」
「理不尽!!!」


先輩のオタク具合は、度を越してたらしい。くそう認識が甘かった。
普段はあんまり笑わなくて怖い顔ばっかなのに、アイドルを前にするとどうしても顔が綻んでしまってる。可愛いじゃねぇかクソ。
でもこんな愛らしい顔をさせてるのがアイドルだと思ったらなんか負けた気がして悔しい。・・・悔しい!!

先輩の彼女はあたしなのに、今日はやっと二人の予定が合って、うち来るかって誘ってくれたの先輩なのに、もう、もう!!


「ふて寝してやるーー!!」
「・・・宣言すんなよ」


ぼふんとわざと大きな音を立てて先輩のベッドにダイブする。
いつも隣にいるとき漂ってくる先輩の香りが、鼻一杯に広がった。あ、なんか先輩に包まれてるみたいいいぞコレ。
もぞもぞとタオルケットをはおると、さらに匂いは強まった。
チラリと先輩を見る。目が合って驚いた。


「・・・お前さ、」


てっきりアイドルに夢中かと思っていたあたしは反応が遅れてしまう。
タオルケットに包まれたまま慌てて返事をすれば、手を伸ばしてきた宮地先輩。

とん、と軽い力で押されて、なんの抵抗もできずにそのままベッドに仰向けに倒れてしまった。
・・・んん?


「それ、狙ってやってんのか?」
「はい!?」
「轢、いや襲うぞ」
「は、ちょままままま!先輩ちょ、んむ!」


どうやらあたしは、変なスイッチを押してしまったらしい。
かぶりつくような口付けに、成す術もなく先輩のTシャツを握る。


「っは、構ってほしいんだろ?」
「・・・はい」


テレビの中で、先輩の好きなアイドルが可愛い顔でウインクをしたのが見えた。

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