オレを見据える二つの鋭い瞳に、体の芯が震える感覚に陥ってしまうのは、もう何度目なのだろうか。
人気もまばらな放課後の教室で、オレの名を呼んだ久遠は、その双眸でオレを睨みながら形のいい唇で言の葉を生んだ。


「黄瀬、今日も女の子と歩いてたよね」
「・・・だったらなんスか?」


言い表し様のない興奮をひた隠しながら、オレは口元に弧を描いて久遠を見下ろした。
歪む彼女の表情。それがさらにオレを煽った。

"嫉妬"。
別の女の子と歩く様をわざと久遠に見せるたび、彼女はこうやって苦しそうな顔でオレを責め立てる。
嫉妬からくる言動だってわかってるから、オレにはそれまでもが可愛く映ってしょうがない。
歪んだ愛?マゾヒスト?なんとでも言えばいいッスよ。

オレは彼女のこの表情が好きなんだ。


「・・・っ繰り返すようなら!あたしにだって考えがある・・・!」
「・・・」


そんな反抗も、オレにとっちゃあ予測済みだ。

久遠が新たな言葉を紡ごうとする前に彼女のネクタイを引っ張り、無理矢理唇を奪う。
くぐもった声が漏れ、視界一杯に広がる彼女の驚いたような表情に、また興奮を掻き立てられた。

深く深く絡んで、酸素を求め始めた久遠の唇を舐めて離れる。
苦しげな、それでいて嬉しげな彼女の上気した顔。

オレは口角を上げたまま、ネクタイをさらに引っ張って顔を近づけた。


「オレじゃないと駄目なくせに」
「っ!」


息を呑む久遠の唇に、もう一度噛み付く。
それらしい抵抗も見せないまま、だが久遠はオレにすがることもなく、行き場をなくした手はただ重力に従ってだらりと下がっていた。

それでいい。
好きッスよ、オレの愛しい久遠。

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