勉強机に向かって、姿勢よくなにかを書き続ける我が彼氏赤司征十郎くんは努力を怠らない人間だ。
勝つことが当たり前ではあるけど、その当たり前の裏にはこんな努力している姿がある。
それはバスケにおいても、今みたいに勉強においても同じことなだけだった。
ただ、彼女が部屋に来てるのに、こんなに構ってもらえないのはどうかと思うんだよね、私だって。
私より勉強の方が大事ですか、ねぇ征十郎くん。
彼女として愛されてないわけないとは思ってるけど、それでもやっぱり不安になるよ。
だって普段は滅多とオフがなくて、今日久々にゆっくりできると思ったのに。
僕の家でゆっくりしないかって、誘ってくれたのは征十郎くんなのになあ。
ねえ、征十郎くん。
こっち、向いてほしいなあ。
「今」
「え?」
「久遠が考えてること、当ててみようか」
「・・・いい。どうせ当たってるもん」
膨れっ面の私を見ることなく、でも征十郎くんの肩が僅かに動いた。笑われてる。
もう。悔しいなぁ。
はぁーと嫌味っぽくため息をつきながら近くのベッドに座って足を折り、その膝に顎を乗せてうつ向く。
冷たいフローリングの床が目に映って、頭に温かな手のひらが優しく乗った。
そのまま髪の毛を撫でられて、私はそれだけで嬉しくなって、つい笑ってしまう。ほんと、悔しいなぁ。
「この課題を終わらせて、なにも気にせずにお前と戯れたいだけだよ」
「うん」
「だから、大人しく待っていろ」
「はい」
髪の毛を撫でていた手のひらが頬に降りて、するりと去っていった。
チラリと征十郎くんの方を見れば目があって、少し口角を上げる彼に私もつられて笑う。
ああ、はやく、征十郎くん。
「今、久遠が考えてること、当ててみようか」
そう言って、征十郎くんはこっちを向かないままシャーペンを動かした。
「僕も、はやく君が欲しいよ」