「いかにも皆で夜市に行かないかい?」
「いかにもの使い方がおかしい」


ある程度渋谷シェアハウスにも慣れてきた夏の暑い日。
猛暑日と称される今日、久遠は暑さのあまり縁側でぐだっていた。
冷凍庫からアイスを取り出して寝転びながら食べていたところだが、会長(曰くクソ猫)の登場ものの数秒で少し溶けてしまっている。

こんな暑い日に夜市?ふざけんな。

久遠の隣で同じく暑さのあまりぐだっている遊騎も、そんな会長の提案には聞く耳持たずといった様子だ。


「夜市だよ?夜市!人で賑わい暑さを忘れ、楽しいひと時を過ごす夜市!いかにも皆で行ったら楽しいと思わないかい?」
「えー・・・だって遊騎、どうする?」
「・・・・・・・」
「・・・遊騎?」「遊騎君?」
「・・・それよりオレ、目の前にある花畑に行きたいねんけど、」
「やばい危ないものが見えてる!会長氷取ってきて氷!」
「らじゃ!いかにも死んだら駄目だよ遊騎君!」
「・・・めっちゃ綺麗やし」
「遊騎いいいいいいいいいいいいい!!!」


遊騎、暑すぎて軽く熱中症。


***


一時はどうなることかと思ったが、久遠達渋谷シェアハウスのメンバーは結局夜市なるものに来ていた。
人の多さに若干顔をしかめて耳を塞ぐ遊騎に、心配になった泪が大丈夫か?と問うていた。
すぐさま女の子に囲まれる刻と大神、そんな二人から若干離れるようにして歩く久遠、そして平家。
久遠が長年の付き合いである平家になんの遠慮もなく「あれ買ってー」とおねだりしている。「仕方ないですね」と財布を取り出す平家。大神がなんとなしにその動作を見ていれば、財布から福沢諭吉が見えて軽く驚いた。


「どの味がいいんですか?」
「えーっと・・・明太子」
「エ!?カキ氷に明太子とかあんノ!?」
「久遠は昔から変わった味が好きなんです。はい、どうぞ」
「まーくんありがとー。・・・あ、これイケる」
「えええええ・・・」


若干引いた目で久遠を見る泪と刻。
大神はポーカーフェイスを保っているが、頬が引きつっている。遊騎はなにも感じていないのか一口ちょうだいとせがみ、そして瞬時に吐いていた。


「いかにも!あそこにお化け屋敷があるよ!」


みんなで入らないかい?という会長の言葉に、泪と刻は瞬時に固まった。
おどろおどろしいお化け屋敷の装飾に、涙目になっている。
一方そういう系が平気な久遠・平家・遊騎・大神は、そんな二人を見て顔を見合わせた。


「なんだ刻、怖いのか?」
「ごばんも涙出てるし」
「ならしかたないですね。会長と五人で行きましょうか」
「えーまじ?二人でお留守番?さーみし!」
「「・・・行く!!」」
「いかにも単純に釣られたね。じゃあみんなでレッツラゴー!」


そんなこんなで腹をくくった泪と刻を引きずりながら、渋谷シェアハウス一同はお化け屋敷へと足を運んだ。


***


ベタにこんにゃくを首筋じ当てられ、声にならない声を上げる泪は、たまらず近くにいた平家に抱きついた。


「・・・やめていただけますか?私に抱きついていいのは久遠だけです」
「しししし仕方ねぇだろオレだってお前なんかに抱きつきたくねっうぎゃああああ!!?」
「煩いです八王子泪」


泪のおかげで足を進められない平家を置いて大神と久遠と遊騎は少し先を歩いていた。


「うわー・・・結構やるねこのお化け屋敷」
「どこがですか?ちっとも怖くない」
「あ!首なしがおるで久遠!」
「え、どこ?ぎゃーマジだ」
「全然怖そうじゃありませんね、アナタも」
「これでも一応怖いんだけどなぁ」
「ポーカーフェイスやし」


脅かし役にとってはなんとも面白くない三人組であった。
一方平家や泪よりも後ろで立ち止まってしまっている会長と刻は、


「ちょちょちょ刻君!いかにもみんな先に行ってしまったよ!」
「(がくぶるがくぶるがくぶるがくぶる)」
「刻君!そんなに着ぐるみ引っ張ったら破けちゃうじゃないか!」
「(がくぶるがくぶるがくぶるがくぶる)」
「・・・いかにも刻君、」
「な、なんだヨ・・・ヒッ!?」
「なんでお化け屋敷入ったんだい?」


こうしてそれぞれお化け屋敷を堪能(?)した渋谷シェアハウス一同は、憔悴しきった泪と刻を引きずって帰路に着いた。

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