浴衣姿も似合うな。

初見、あまりの可愛さに(本人には決して言わないが)少しの間石化してしまっていたオレ。
普段はおろしている髪の毛をアップにしていたりだとか、ナチュラルメイクを施していたりだとか、お前はオレを殺したいのかと思いつつ・・・
暁であるオレ達は普段黒のコートを着ているわけだが、こんな大勢の人がいる中でわざわざ「暁がここにいるぞ」なんてことはしたくない。
無駄に人を殺すのは、こいつの前では戸惑われるため、オレも今日は浴衣を着ていた。


「わー人がたくさん」
「そうだな」


暁がこんな祭り事に参加するのは前代未聞のことであるが、今日は特別に許可が下りた。
リーダーも久遠のことは可愛がっているのだ。これで可愛い久遠をたくさん撮ってきてくれと渡されたカメラは、丁寧に破棄しておいた。
純粋な久遠を穢すなクソリーダーめ。


「どうしたの角都?なんか顔が怖いよ?」
「そうか?それより、今日は今まで節約だといって我慢させていたぶん、たくさん金を使ってもいいぞ」
「わっ、ほんと!?やった!角都大好き!!」


満面の笑みを見せた久遠。・・・惜しいことをしたな、リーダーから渡されたカメラ、壊さなければよかったか・・・いや、いい。オレの心の中のアルバムに仕舞っておこう。


「じゃあねー、あれやりたい」
「・・・金魚すくい?」


可愛いなオイ。
言いかけた言葉をグッとこらえ、じゃあ行くかと手を差し出す。
嬉しそうに頷いてオレの手に小さな自分のそれを重ねる久遠。こいつはどこまで可愛いんだと心中悶えながら、オレ達はゆっくり歩き出した。


「金魚って金っていう字が入ってるでしょ?持って帰ったら金運あがりそうだよね!そしたら角都も暁の財布役としての苦労が少しは減るかなあ?」
「・・・録音しておけばよかったか・・・!」
「へ?なに?聞こえなかったもっかい言って?」
「いやなんでもない。行くぞ」
「う、うん」


もういっそお持ち帰りしてもいいだろうかこの可愛い生き物。


***


一回三十両だぜと差し出された男特有のゴツゴツした手に、渋々金を乗せて金魚すくい用の網と取り皿を貰う。
腕まくりして意気込む久遠にそれを手渡せば、「案外薄いんだね・・・」と一気に自信をなくした顔をされた。
追加で二十両払えば、特注の破けにくい網をもらえた。


「ほら」
「わ!すごい厚いね!よしがんばる」
「ああ。がんばれ」


特注の網だからか、忍である久遠の反射神経もあわせてほいほいと金魚がとれていく。
いっぱいとれるよ角都!見て角都!・・・オレの名を連呼する久遠は、とても愛らしかった。

とりすぎて店主が泣きついてきたところで久遠はまだ破れてもいない網を返し、そして金魚を二匹残してあとは水槽に戻してあげていた。
・・・天使か。


「かわいーねー」
「・・・そうだな(お前のほうが可愛いが)」
「これで金運あがるかなあ?」
「・・・そうだな(お前がいるだけで頑張れるが)」
「角都」
「? なんだ」
「また来ようね!」
「、そうだな」


来年もその次も、オレはこいつの笑顔を見ていたい。

笑った久遠の頭をなで、手を取る。
夏祭りはまだ、始まったばかりだ。

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