久遠が嬉しそうに笑っている。
その手には、プラスチック製のペンギンのようなもの。
初めて見るそれに少し興味がわいて近寄ると、久遠が得意気に胸を張った。
「オビト、今の季節はなーんだ?」
「・・・夏、だが?」
「夏といえばなーんだ?」
「スイカわり、肝試し、花火、・・・」
「ばっか!」
違うよと得意気な顔のまま口角を上げる久遠。
スイカわりや肝試し、花火をしたのは記憶に新しい。
夏というのはすることがたくさんありすぎるな。
「正解はぁ〜・・・かき氷でしたっ」
「オレはコーラ味がいい」
「反応はやっ!ちなみにあたしはハワイアンブルーね」
頭の回転の早さには自信がある。
オレと久遠は顔を見合わせニンマリ笑うと、院内の冷蔵庫に足を運んだ。
***
ガリゴリガリガリ...
氷を削る音が響く。
小さな体にかき氷機は少し大きくて、まだひ弱な力では結構労力を使うものだった。
暑くて汗をかいている久遠の顔をタオルで拭いてやりながら、どうにか二人分のかき氷が完成。
目を輝かせる久遠をつれて、シロップを探す。残念ながら、コーラ味はなかった。・・・くそ、
「いたっ!?なにオビト!?」
「心配するなただのやつあたりだ」
「心配はしないけど、かなりムカつくよね」
オレも久遠と同じシロップをかけた。
ハワイアンブルーか・・・舌が紫色になるな。
一生懸命に背伸びしてスプーンをとろうとする久遠のお腹に手を回して持ち上げる。
とれたよ、と振り返った久遠を抱いたままかき氷のあるテーブルに運んで、降ろした。
「ではっ!」
「ああ」
「「いただきます」」
しゃくり。
ぱくり。
「っうあー」
「、っ」
今まで暑い中作業をしていたせいか、急に冷たいものを食べると頭に響く。
隣で久遠が眉間にシワを寄せながら、だが美味しそうに二口目を口に含んだ。
「んんー・・・!キンキンする」
「そのうちなれるだろう」
「でもおいしーね」
「ああ」
最後のほうになり、溶けてきたそれをジュースのようにして飲み干す久遠。
オレも同じように飲み干せば、冷たすぎてまた少し頭に響いた。
べ、と出した舌は、予想通り紫色に染まっていた。