「ぶふうへへへ」


更衣室から出てきたオレ達に、久遠は鼻を膨らまして気色の悪い笑い声を発した。

思わず何歩か後ずさる。
隣にいるデイダラは、少し青ざめていた。イタチは平気な顔で立っている。
狙われるのは主にオレとデイダラとイタチ。

ターゲットにならない飛段は、その様子を面白げに眺めていた。くそ、だからプールなんか嫌だったんだ・・・!


「水着姿最高っ!」
「寄るな変態!うん!」


今回のターゲットはデイダラだった。
心の中で安堵のため息をつくと同時に、少しの嫉妬心が生まれる。
矛盾じゃねぇか。
小さく首を振る。
イタチが面白くなさそうに眉をすがめた。


「なぁ早くプール行こうぜぇ」
「そうだね水もしたたるなんとやらって言うしねうへへへへ」
「お前は下心が丸見えなんだよ・・・うん」
「少しは自重しろクソが」
「ところで・・・どのプールに入るんだ?」


イタチは辺りを見渡しながら言った。
どうせ行くならと大規模なプールに来たため、プールの形態は様々なものがあった。

賑やかなのはあまり好きじゃねぇ。


「人が少ねぇとこがいい」
「はぁー?んなのここに来た意味ねぇだろサソリよぉ!あれだろ。えーっと・・・すべり台みてぇなやつ」
「ウォータースライダーね。あたしもそれがいいな。どさくさに紛れてあんなことやこんなこと」
「だから下心が丸見えだっつってんだろーが。うん」
「オレは久遠が行きたいところに行こう」


結局、ウォータースライダーになった。

人多いけど・・・まぁ、久遠が行きたいならそこでいいか。


***


飛段と久遠の高すぎるテンションに早くもついていけねぇ。
ウォータースライダーを滑っていても、久遠がどさくさに紛れて抱きついてくるからバランスが崩れて頭から水にダイブ。
鼻や口に水がガッポガッポ入るから頭は痛くなるわで散々だった。
ぐったりとプールサイドに身を投げるデイダラの気持ちが分からないでもねぇ。

またウォータースライダーの階段を上ろうとしている久遠と、さすがに疲れたのかこっちに向かってくる飛段。


「・・・久遠は元気だな」
「まったくだぜ」
「オイラもうダメだ・・・」
「うえぇぇ・・・やべぇスライダーやりすぎたぜ」
「吐くならトイレ行け飛段」


ふとスライダーの方を見れば、見知らぬ男に手首を掴まれている久遠が見え・・・た・・・!!?

なに、ナンパされてんだあいつ!

立ち上がって駆け出す。
イタチやデイダラ、飛段も気づいていたのかオレの隣で走っていた。

・・・ったく、お前らみんないつだって視界には久遠を映してんのかよ。

少し可笑しくて笑ってしまう。
オレ達に気がついた久遠が目を輝かせて手を伸ばしてくる。

オレはその手を掴んで、引き寄せた。


「こいつに触んな」
「返してもらおうか」
「馴れ馴れしくしてんじゃねぇよ、うん」
「死ねクズ」
「いや飛段そこまで言わなくてもさ、」
「「「いやナイスだ飛段」」」


オレ達の威圧に、男どもは怯えて逃げていった。ざまぁ。


「・・・サソリさん惚れ直しました」


腕の中で、久遠が頬を染めている。

オレは鼻を鳴らしてウォータースライダーの入り口に久遠を押し込んだ。

悲鳴が聞こえるが、知ったこっちゃねぇ。
変な男に触らせてんじゃねーよクソが。

変にイライラする気持ちを誤魔化すかのように、オレもあとに続いた。

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